はじめての女(その2)

翌日、俊吉は三太郎に断りを入れ、お佳代という「はじめての女」を上野の池の端へ連れ出した。

不忍池の蓮の花が、鮮やかに咲いていた。

茶店の縁台に並んで座り、お茶で団子を食べ、お酒も飲んだ。

お佳代は、けっこういける口で、ほんのり頬を染めながらも、お銚子を三本も空にした。

池の鯉に麩菓子を与えながら池の端を巡り、出会い茶屋に入った。

部屋に入り、抱きしめて口を吸うと、お佳代は舌をからめてきた。

口を吸いながら、帯に手をかけると、お佳代はみずから帯を解き、小袖を肩から外して足もとに落とした。

緋色の襦袢一枚になったお佳代を布団に横たえ、昨日と同じように、ゆっくりと胸のふくらみをなぞり、乳首をついばんだ。

「ああ」

のけぞるのを見て、襦袢をまくり、鏡餅のように大きな白いお尻を、円く撫でまわした。うつ伏せにさせ、ふたつのふくらみの隘路から掌をすべりこませ、先にある厚肉の唇の合わせに指をあてがい、・・・羽毛で微かにはくようになぞった。

「ひい」

からだをひくつかせたお佳代は、みずから大きなお尻を突き出した。

「いいながめだねえ」

かすれた声で俊吉がひやかすと、

「いやっ」

お佳代は、身をよじった。

表返しにして口を吸いながら、ゆったりと乳房をなでた指で脇腹をなぞり、おのずと開いた太ももの付け根で舟形に盛り上がる肉のあわいを、時間をかけてもみほぐすと、こんこんと湧き出る蜜で小舟は水浸しになった。

「よく濡れるいいお道具だね」

俊吉が褒めると、

「ほんとうに?」

と、眉根に眉を寄せたお佳代も、かすれた声で聞き返す。

「ああ、ほんとうだよ。びしょ濡れだねえ」

「いやらしい・・・」

「いやらしいのは、お佳代ちゃんのからだだよ。ああ、・・・甘い香りもする」

お佳代は、艶然と微笑むと、両手を伸ばして俊吉の下帯をほどきにかかった。

―半刻も、汗みどろになって、男と女の戯れをこころゆくまで堪能した俊吉とお佳代が、抱き合うようにして出会い茶屋を出ると、傾きかけた天道が不忍池を赤く染めていた。

・・・そこへ、広小路の方からやってきた若い男が、すれ違いざま、

「あれっ、小百合ちゃん、じゃないのかい」と、お佳代に声を掛けた。

佳代の上気した顔は、一瞬にして蒼ざめた。

俊吉の背に隠れるようにした佳代は、急に速足になった。

―「いやあ、まいったね」

三太郎の顔を見るなり、俊吉はぼやいた。

「どうしたい。なんか急に頬がこけたねえ」

にやつく三太郎に、俊吉は顔を寄せ、

「たしかに『はじめての女』なのだろうが、あれは生まれつきの淫乱だね。それもドのつく」

と、声を潜めていった。

「なら、明日から店に出そうか?」

根っからの商売人の三太郎は、早くも算盤玉をはじきにかかった。

「いやあ、そいつはちょっと・・・」

俊吉は、奥歯にもののはさまったような口ぶりになった。

「ははあ、俊さん、ミイラ取りがミイラになったんかい」

三太郎が笑った。

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