あふたーすとーりー あきちゃん
秋乃「ん〜! ねむーっ!」
腕を組み上に伸ばす。グッと伸びた背中が気持ち良くて思わず声が出てしまった。
一人の保健室に私のふぬけた声が反射する。
私は大学の専門学校に入った後、高校の教師になった。
だけど、特別先生に憧れていたわけじゃない。
あの時、彼にバスケを教えてもらって、それを実際に活かせて嬉しかった。だからいつか自分の教えたことが誰かの役に立てばいいなと、教師になったのだ。
秋乃「まぁ、そう言っても、結局保健室の先生なんだけどね。」
そう、私は保健室の先生。
保健体育の授業をすればなぜか教室は盛り上がるし、男子たちは正直、私に対してエロい目でしか見てない。
そう思うと、はぁ…とため息が洩れる。
私…なにが教えられるんだろ。
そして、私が教えたことは、彼らのためになるんだろうか?
? 「せんせー、頭痛ーい」
そんな伸びた声でドアを開けたのは、黒色のセミロングが特徴的で、整った顔立ちの女子生徒、3年2組、
詩音はぐーっと腕を伸ばすと私の前に座った。
詩音「せんせー、ベット空いてる?」
秋乃「はぁ…、日数は大丈夫なの?」
詩音「シオン頭いいんで問題ないでーす」
秋乃「そう…まぁ、程々にね」
詩音「ありがと♪あきちゃん」
そう機嫌よさそうに言うと、跳ねるようにベットへ飛び込む。
さっそく靴を脱ぐと横になりスマホをいじり出した。
そして、しばらくの間静かな時間が流れ、もう少しで昼休みを迎えるといったタイミングで彼女が口を開いた。
詩音「最近元気ないけど、どーしたの?シオンに話してみ?」
そんな詩音の頭に軽くチョップを入れる。
アイタッとおちゃらけた声が聞こえた。
秋乃「調子に乗らないの。それにあなたに話すほどの悩みじゃないから」
詩音「でも、あきちゃん元気ないし、なんてか、それじゃここにきた意味がないじゃん」
秋乃「え?」
ヨイショと詩音は起き上がり、私の前に座る。
そして、机に肘をつき若干の上目遣いで私を見ると、
秋乃「シオンでも、話すと少し違うかもよ?」
と微笑むのであった。
秋乃「…って感じなんだけどね、だから最近、なんだか分からなくなってきちゃって」
詩音「へぇー」
秋乃「へぇーって…まぁ、そうだよね、これは自分の悩みだし、そう言う反応になるよね」
詩音「ううん、そーじゃなくて」
秋乃「え?」
詩音「せんせーは、ちゃんと先生してるよよ」
そう言うと、シオンは自分の髪をくるくると指でいじり出す。
詩音「なんて言うかさ、せんせー最初の方に言ってくれたじゃん? 辛い時はいつでも来なさいって、だからその時、思ったんだー、私ここに居ていいって、辛い時は逃げても良いんだって」
だからさ…。
ひとつ呼吸を置いて、こちらに顔を向ける。
くるくるとしていた指を止めた。
詩音「せんせーはもっと自信持った方が良いよ、それにあきちゃんは可愛いんだし」
詩音は優しく微笑みかける。
私はそれが嬉しくて、思わず目頭が熱くなったけど。生徒の目の前で泣くなんてそれこそ示しがつかない。
グッと堪えて、私もにこりと微笑み返す。
そして詩音の頭に手を乗せると、わしゃわしゃーっと乱暴に撫でた。
詩音「わ!急になに!? てか、せっかく櫛でとかしたのにー!」
秋乃「あ、ごめん、私が直してあげるから」
詩音「え、いいの? やったー!」
そう言って喜ぶと、さっそく私の前に椅子を持ってきて、背中を向ける。
あぁ。確かにボサボサだ。
カバンから櫛を取り出してそっと下に撫で下ろしていく。
サラサラとした綺麗な髪の毛は、まるで絹のように滑らかな感触で櫛が入っていった。
詩音「ね、せんせー」
秋乃「ん、なに?」
詩音「明日も来ていい?」
秋乃「明日も? まぁ、授業はあんまりさぼらないようにね」
詩音「はーい、ありがとあきちゃん♪」
シオンは心地よさそうに、クスリと笑う。
本当になんて良い子なんだろう。ありがとうを言わなくちゃいけないのは、私の方なのに。
でも、この子が、学校を楽しいと思ってくれてるのなら、きっと私が教師になった甲斐もあるのかもしれない。
ふと、窓の外を見る。
すでに夕日は沈みかけており、グランドの野球部もグランド整備を始めていた。
あぁ、こんな良い日にはお酒でも飲みたいな…。
久しぶりに雨谷ちゃんと、彼も誘っちゃおうかな♪
幼馴染と俺が付き合うまでの話 あげもち @saku24919
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