久しぶりにすごいものを読んだ話

 安部元首相の暗殺事件、衝撃でしたね。

 あまり政治背景もなく、組織的な意図もなく、手製の銃だったそうで。犯人自身も驚くほど簡単に要人の暗殺が完遂してしまいました。SPなにやってたんだ、という意見が出ていますが、まったくその通りかな、と。まるでジョン・レノンじゃないですか。個人的には安部元首相の政治手腕は評価しています。ご冥福をお祈りします。


 話は変わって俺の日常。

 久しぶりにカクヨムの長編を一気読みしてしまいました。

 読みやすくて、中身が濃くて、しかも練り込まれたストーリー。

 ちょっといじめと暴力シーンが出てくるので万人にはお薦めできないのが難点なんですが、間違いなく今年読んだ中で屈指のストーリー作品に出合ってしまったのですよ。


 冬場蚕さん「小さな悪の芽」

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556325942702


 彼女を妊娠させてしまった高校生圭祐、あえて氏名が伏せられたいじめられている小学生の女子「わたし」、礼子という有能な心理コンサルタントの女性。異なる視点の3つのお話がそれぞれ展開されます。

 ところが話が進むうちにそれぞれの内容がリンクしていきます。内容は犯人捜し系のミステリーという感じでしょうか。ばりばりの現代ドラマでもあります。現代社会の闇を書きつくしています。

 これ個人的にやってみたい小説技法なんですよね。俺、昨年のカクコン作品「いつしか、キミが、ロリになる」で時系列と視点をわざとばらした話書いたじゃないですか。あれのもっと複雑で緻密で話同士のつながりを秘匿した感じのお話です。

 それでいて読みやすいのが素晴らしい。

 作者の冬場さんは、昔俺の長編を読んでいただいた縁でフォローしていたのですが、ここしばらくカクヨムには投稿されていなかったんですよね。この作品も何かのコンテストで落ちたので供養のつもりでカクヨムに公開したとのこと。いずれ消すつもりとおっしゃってられます。興味のある方は消される前に是非。現代ミステリ好きの人は絶対ハマります。十五万字ありますが、長さを感じさせません。というかこの完成度でどのコンテストでも箸にも棒にも掛からないってマジですか? まあたしかにキャッチ―ではないですが、小説としてものすごいハイレベルだと思うんですが。


 それと追いかけ中の大長編が三本同時に相次いで終盤に差し掛かっています。

 まずは大長編といえばこれ。


 竹神チエさん「悪女が生き残る方法~伯爵令嬢に転生したけど処刑されるなんてお断りです~」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354055047106956


 ご本人曰く終盤に差し掛かっているらしいですし、時戻りの謎もだいぶ明かされて来ました。しかししかし。なぜかジュリアスが出てくるたびに字数は増えるが話が進まない状態の繰り返し。今のところ物語の着地点が見えていないような気も……。

 いや、そんなことないですよね。現在百万字を突破して百二万字。二百万字までにはエンディングが読めると思ってますが、ダブルミリオン狙ってみるのもそれはそれで一興かなとも思います。あと個人的にはロリババアにもうひと働きしてほしいところかなと。


 そしてlagerさんのこれ。

 lagerさん「聖女(クズ)と勇者(のうきん)と王様(さぎし)と私」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054893993523


 この作品、今まさにクライマックス。ラスボスは覚醒した佐藤くん。難敵ですよね。ここまで来るとお互いの正義とは何か、というテーマになってきています。でもこれは永遠に分かり合えるものではないことは自明ですね。

 しかしこの話、読み返してみると全体がプロローグからのながーい回想シーンなんですよね。ある意味すでに結末がネタバレしているという。そのおかげで安心して読めるというか、ラスボス佐藤くんはどうやって撃破されるかだけに着目されるというか、勝負の趨勢は分かっちゃってるのが惜しいというか。lagerさんのことですからもうひとひねりしてくるんじゃないかなーと思います。現在三十七万字です。意外と少ないとか思ってしまうあたり感覚がおかしくなってます。


 最後はたちばなわかこさんのこれ。

 たちばなわかこさん「たどり着いた異世界は私の見ている夢だったので、寝たり起きたり24時間やすめません 」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886617510


 連載五年目に突入しようかという連載期間の長さでぶっちぎり。俺がカクヨムで最初に書いた短編にハート投げていただいた縁でずっと読んできました。

 主人公の高校一年生の少女が異世界転移して大活躍するというお話なんですが。すでに話は主人公は天寿をまっとうして、主人公の娘も老衰で死ぬところまで連載が進んできています。主要な登場人物は全員亡くなって、その子どもたちの世代も終わろうとしている。

 いやあ、たちばなさん、さすがにこれは書きすぎですよね。これ全編通して読んでいるのは俺ともう一人の読み専の方だけです。

 でも、そんな超大作も残すところあと二話でエンディングとのこと。連載お疲れ様でした。朝の通勤電車の中でこのお話読むのが、もはや生活の一部になっていましたもんね。

 とはいえ冗長なのと風呂敷広げすぎなのは間違いないところ。本編四つと末姫編に分けると読みやすくなるんじゃないでしょうかね。

ともかく百二十五万字の話を書ききったことは大いに賞賛されるべきだと思います。


 俺もそろそろ短編を一本書いて、その後カクコン用の長編に取り掛かろうかなーと思っています。短編は久しぶりにガチなヤツ行きます。

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