プレゼンに向けてのミーティング、白熱する

実は白百合2139-PBについて、単なる<カスタム機>としてでなく、<白百合シリーズのバージョンの一つ>として発売されることが決定していた。ゆえに、正式に<2139-PB>の名が与えられていたのである。白百合2139-PBをオーダーしてきたブライダル課ともその方向で合意が得られている。


しかも、コンポーネントそのものは基本的に<白百合2133-WD(ホワイト・ドール)>と同じものを用いつつも、すでにここまでで細かいセッティングは新たに行われていて、もはや完全に別の機種と言っていいほどに仕上がっている上にそれ自体も良好な結果が出ている。もう十分に<新しい機種>としての評価も得られていたのだ。後はライフビルド部の役員とロボティクス部の役員らを納得させればそれで商品化が正式決定する。


ブライダル課が企画している<ウェディングショー>でのお披露目が発表の場と決まってもいた。


それに向けて、第一ラボでも最後の詰めに入る。さりとて、白百合2139-PB自体はほぼ完璧に仕上がっていると言ってもよかった。だから、評価試験の際にいかに白百合2139-PBの魅力を最大限アピールできるかを考えなければならない。


そこで、


「いっそのこと、本当の結婚式を再現しようと思う」


エリナ・バーンズがミーティングでそう提案した。


「はい、私もそれが最適だと思います」


「僕も賛成です」


皆、プレゼンの形式を<結婚式>にすることには賛成してくれた。だが、細かい部分の演出で、


「せっかくだから、<文金高島田>も再現したらどうかな?」


という意見が出て、


「そうだよね。そっちに憧れる女性だって決して少なくないし」


などと言われたりもしたものの、


「いや、白百合2139-PBはあくまでウェディングドレス用のマネキンとして開発したものだし、そちらのセッティングは出してない。それはそれとして別に開発するべきだ!」


との反対意見もあり、それでいて、


「だけど、文金高島田用の機種を新たに作るとなるとそれだけコストも余計にかかるし、あくまで設定の変更だけで対応できるようにしたらいいんじゃないかなあ」


そう口にする者も出たりと、この段階に至って新たな方向性が打ち出されたりもした。


これについて、白百合2139-PBとして参加していた千堂アリシアは、


「私としては、データさえあれば、対応は可能だと思います。問題は今からそのデータを集められるかどうかですけど」


と告げたのだった。


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