評価試験の日程、決定する

こうして、ジョン・牧紫栗まきしぐりについては、決着がついたと言っていいだろう。彼はこの後の人生を、ただただ被害弁済のために刑務所の中で生きることになる。たとえ何らかの理由により減刑されたとしても、生きている限りは出所は叶わないほどの量刑を受けて。


刑務所の中の暮らしはなるほど快適かもしれない。ひたすら、


<健康的で規則正しい生活>


を、自由を制限された中で過ごすことになる点を除けば。刑務作業も、過酷というようなものでもない。


その一方で、先にも触れたとおり、電脳化手術を受けているので、それの無効化処置がどのような結果をもたらすかはリスクとしてあるものの、これも『必ずそうなる』というものでもないし、そもそも確率としては一パーセントにも満たない程度なので、滅多なことはないだろう。


よほど運が悪くない限りは。


そして万が一があったとしても、きちんと治療も受けられる。死なせてはもらえない。


そんな暮らしをどう受け止めるかは、本人次第だ。まっとうに悔恨の日々を送るのであれば、決して苦痛ではないと思われる。反省することなく、自身が置かれた状況を<理不尽>と受け止めるのであれば、少なからず苦行になるだろうが。


これについては、


『他者の権利を蔑ろにした』からこそのものなので、ある程度の制限が加えられることについては当然のものであるとされている。異議を申し立てたところで聞き入れてはもらえない。死刑制度が廃止されるにあたって<対案>として合意が得られたものである以上、もはや譲歩はない。


すべては、彼自身が招いた結果なのだ。




そんなジョン・牧紫栗とは対照的に、この社会ときちんと折り合いを付けて身の丈に合った生き方をしようとしている紫音しおんや良純は、順調に愛を育んでいた。大変な財産を築けるわけではないものの、贅沢三昧の暮らしができるわけではないものの、気に入らない相手を貶めて嘲笑うことができるわけではないものの、ただ<幸せ>の中で穏やかに暮らすことができていた。


そして、白百合2139-PBがアンドゥで働き始めてから二週間が経ち、いよいよ、役員らの前で改めて評価試験が行われることに決まった。


「試験は三日後。ライフビルド部の役員の代表と、ロボティクス部の役員がほぼ全員出席する。その中で、十分な価値のあるパフォーマンスを見せることができれば合格となる」


エリナ・バーンズと共に役員室へと呼ばれた千堂アリシアは、千堂京一せんどうけいいちからそのように告げられ、エリナ共々、


「はい……!」


しっかりと返事をしたのだった。


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