ジョン・牧紫栗、ニュースで報じられる

テロリスト<ジョン・牧紫栗まきしぐり>逮捕の報は、翌朝のトップニュースとなった。


「へえ、テロリストが逮捕されたんだ。よかった」


アンドゥの開店準備をしながらラジオのニュースでそれを聞いた紫音しおんが何気なくそう口にする。だが、それ以上の感想は何もなかった。彼女にしてみれば、テロリストとはいっても実際に何らかの被害を受けた実感がないのだから。


さりとて牧紫栗が起こした事件の所為で良純がアルビオンに急遽出張することになったのだが、ニュースの詳細にまで意識を向けなかったことで、その程度の認識で済んでしまった。


しかし、それでいいのだろう。彼女がいくら憤ったところで、その気持ちは牧紫栗には届かない。反省もしない。牧紫栗はそういう人間だ。そんな人間に関わったところで精神衛生上好ましい点など何もない。牧紫栗はこれからただただ法に則って粛々と裁かれ、有能な弁護士が付いたところで懲役数百年が何割か減刑されるだけで、実質的な終身刑には変わりないだろう。


JAPAN-2ジャパンセカンドに対して行った犯罪行為については執行猶予も有り得るものだったが、ニューオクラホマ市でのテロに加担したとなれば、これはもう懲役三百年程度は固いとみられる。JAPAN-2ジャパンセカンドでの法的手続きが終われば、おそらくアルビオンに引き渡されてそこでも裁かれ、さらにニューオクラホマ市に引き渡されて、そこでもまた裁かれることになる。そしてニューオクラホマ市の刑務所に収監されるだろう。


ちなみに都市をまたいだ犯罪の場合、禁固刑については最も重いものを言い渡された都市で収監されるのが習わしである。その上で、刑務所内で就労し、罰金や賠償金などがあればそこから天引きという形で徴収される。


<逃げ得>は許されない。ちなみにこれは民事裁判も含んでのことである。民事裁判で支払い命令が出ても外国などに逃れることで支払いを免れようとする者がかつていたゆえに、そのような仕組みに変わった。


加えて、判決の段階で、


『自力で被害を弁済するか、でなければ刑務作業によって弁済するか』


のどちらかを選択させられるため、裁判所の命令に従わずわざと支払わなかった場合には刑務所に収監されそこで働くことになる。


なお、被害者への補償については、JAPAN-2ジャパンセカンドの場合は、まずはJAPAN-2ジャパンセカンドが立て替えた上で別途徴収することになるので、加害者の経済状況などに拘わらず補償を受けることはできる。


被害者救済を重視したがゆえの制度である。


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