アルビオン社、莫大な損害を被る
このようにして、多数の人間が動き、対処することで、状況に一定の方向性を持たせることに成功したようだ。
良純らも、初手で
これが後々、大きな意味を持ってくるだろう。おそらく
アルビオンに入ってから何か具体的に働いたようには見えなくても、しっかりと必要なことは成し遂げていたのだ。『明確な態度を示す』というのはこれほどまでに重要だということが改めて分かるだろうか。
また、この世で起こる出来事というものは、誰か一人の英雄の活躍によって解決するわけではない。名を知られることもない数多の人間達がそれぞれの役目を適切に果たしてこそ被害の拡大を抑えることができるのである。
今回のこともそういう一例になるだろう。
そして翌朝。夜を徹して行われた検証作業により、やはり何者かがアルビオン社の物品管理システムに侵入し、
AIが検出した痕跡によって大まかな目安は付けられていたとはいえ、普通にしていれば数週間を要したであろうその作業を一晩で成し遂げたアルビオン社の担当者達の能力の高さと執念は称賛に値すると思われる。おかげで良純達も交渉が行いやすくなり、果たしていつ帰れるか分からない状態だったのが、一週間はかからないであろうという目途が立った。
「ごめんな。まだしばらくは帰れないけど、たぶん、一週間ほどで帰れると思う」
良純が、
「よかった……お仕事頑張ってね。でも、体には気を付けて」
「うん。分かってる。愛してるよ、紫音」
「私も、良ちゃん。愛してる」
二日目の夜。ホテルの部屋の隅でそう電話でやり取りしている良純を、上司と住良木が生暖かい目で見守っている。
とは言え、それができるだけの精神的な余裕が出てきたのも事実ではあるが。
その一方で、不正コードで汚染された部品については廃棄されることが決まり、代わりの品をいかに手配するかの交渉に移ることになった。汚染された部品とその保管状況を良純らも実際に確認して、不正コードを除去しただけでは品質を保証できないとの判断が下されたのだ。その不正コード自体が<
これにより
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