ビジネスの達人、当たり前の対処をする
『つまりそれだけ今回のことは緊急事態ということだ』
千堂が発言したそれについて、
それに、万が一にも本当に不正コードが紛れ込んでいたら一大事なので、当然、対処は必要だ。そうして対処して問題がなかったのだから、今度はアルビオン社の管理体制の不備を想定し対処しなければならない。
ビジネスとすればごく当たり前のそれであろう。
Brahmadeśa社の役員もアレキサンドロも、ビジネス巧者として当たり前の発想を持っていた。
しかし同時に今回については、
「クラッキングの可能性も高いだろうな」
千堂が口にすると、二人も、
「ああ、確かに」
「十分に考えられる事態だ」
と頷いた。
「では我々としても、その線で対応策を考えなければな」
Brahmadeśa社の役員はそう告げて、端末を操作しどこかに指示を与えていた。当然、アレキサンドロも、
「ならば、私も早急に手を打つことにしよう。千堂、情報提供感謝する」
言いながら電話を始める。すると彼が連れていたフローリアM-9が深々と頭を下げてきた。
こうして千堂も、ロボティクス部の役員とはいえ
アルビオン社には、直接の担当者が出向いている。その上で、今回の件で想定される影響を予測しあらかじめ手を打っておくのは、責任ある立場として当然のことだった。
これができなければ、この時代、大きな影響力を持つ企業は生き残れない。ただただ受動的になって状況の推移を見守っているだけでは駄目なのだ。積極的に自らが状況を動かしコントロールする側にならなければ、どれほど専門職としてのスキルが高かろうと、責任ある立場には就けない。あくまでその<専門職としてのスキルが活かせる場>を任されるだけであって、その上には行けないのだ。これは、メイトギア課の技術主任である
彼らは専門職としてのスキルは超一流であるものの、さらにその上から全体を指揮する能力に欠けているのは事実だった。かつてULTRA-
ゆえに<適材適所>が望まれているわけだ。
なのに、自身の適性を過大評価して野心を肥大化させ、そんな自分を評価しない社会を逆恨みする者もこの世にはいる。
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