千堂、Brahmadeśa社の役員に面会する
こうして良純らが慄いている他方では、
「やあ! ケイチ! 元気だったかい!?」
陽気に迎えてくれたのは、千堂と昵懇の仲であるBrahmadeśa社の役員の一人だった。
「ああ、久しぶりだな」
と挨拶もそこそこに、
「それで、お願いしていた件はどうなっただろうか?」
尋ねる千堂に相手も、
「ああ。こちらでも確認したが不正コードは検出されなかった。四回確認したから間違いない」
回りくどい話は抜きにして応えてくれる。するとそこに、
「千堂!」
聞き覚えのある声が掛けられる。
「アレックス!」
千堂が声のした方に視線を向けると、そこにいたのはニューヨハネスブルグ一のロボットメーカー<A&Tカイゼル社>のメイトギアである<フローリアM9>を連れた、<GJKトラスト>のゼネラルマネージャー<アレキサンドロ・マカトーニ>だった。
アレキサンドロも、たまたま所用で
なのでアレキサンドロも、
「千堂から情報提供があった件、こちらでも確認してみたが『問題なし』だ。我社だけでなく、提携関係にある数社にもあたってみたが同様だった。これはいよいよ、アルビオン社側の問題だという可能性が高まったな」
簡潔に事実だけを述べてくれる。
千堂は、
<
について裏取りを行うためにこうして行動を起こしていたのである。話をするだけならば端末を介した通信でもよかっただろうが、実際にこうして顔を合わせるからこそ相手も腹を割って話してくれるというのも確かにあるのだ。特に今回のような繊細な案件だとそれが物を言う。
加えて、
「しかし千堂、今日は彼女は一緒じゃないんだな?」
アレキサンドロが残念そうに口にする。<彼女>、千堂アリシアが千堂の傍にいないことを言っているのだ。実際、この時に彼が連れていたのは、<アリシア2236-OA(オフィス・アドミニストレーター)>という秘書仕様のメイトギアだった。アレキサンドロは千堂アリシアにも会いたかったのだ。それに対して千堂は言う。
「申し訳ない。彼女は他の仕事でスケジュールが調整できなかったんだ。つまりそれだけ今回のことは緊急事態ということだ」
険しい表情で。
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