JAPAN-2、対応を急ぐ

アルビオンで不正コードの混入が発覚したという部品の一部は、それこそロボットから生活家電まで当たり前のように用いられている制御用チップだった。だから影響を与える範囲はそれこそ膨大だ。何しろ日常の業務で使用している端末などにすら使われている場合があるので、それらまで凍結となるとまともな業務すらできなくなる。


ただし、その種のトラブルについては過去にも様々なところで生じていたことからある程度の対策は施されていて、すべての端末や機器が使えなくなったりしないように、まったく別のラインで生産された部品で組まれたものを揃えるようにはされている。これにより、使えなくなった端末や機器は、それぞれのオフィスで平均一割程度で済んだ。


もっとも、その一割がなかなか厳しいのだが。とは言え、すべてが止まってしまうことを思えばまだ救いもあるだろう。


第一ラボでも、使えない端末や機器はあったが、なんとか他のもので対処できるようにした。特に端末は、予備として置かれていたものを使うことで対処する。


しかし、よりにもよって白百合2139-PB(仮)がそれにあたってしまうとは、運がない。


さりとて、嘆いていても状況は変わらない。アリシアも、


『不正コードが混入した可能性のある機体にリンクしていた』


ことでスクリーニングを受ける事態になったが、三十分と掛からずに、『問題なし』と診断を受けることができ、復帰した。


そしてこの時、エレクトロニクス部サプライヤー課でも、


「ロットナンバーNKS355000からNKS357000まで、追跡完了しました!」


良純りょうじゅんが上司に告げる。


そして次々に上がってくる報告を受けて、上司は、


「どういうことだ……? アルビオン以外からは一切、同様の報告がない……」


と呟く。


そう呟きながらも内心では、


『やはりこれは、アルビオン側の問題では……?』


とも考えていた。アルビオンの管理に問題があり、そこで不正コードが紛れ込んだ可能性があるのではないかと。


「よし! 今からアルビオンに飛ぶ! 向こうで現物を確認しないことには始まらん! 住良木すめらぎ! 友利! ついてこい!」


「はい!」


上司に命じられ、良純は、


『ごめん、紫音しおん……』


胸の内でそう詫びながら、準備を始めた。


こうして、アルビオンからクレームが入って僅か一時間足らずのうちにJAPAN-2ジャパンセカンドが被った損失額は概算で十億円を超えた。そして問題解決が遅れるごとにそれは雪だるま式に増えていくことだろう。


いかに迅速に事態に対処するかが肝であった。


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