紫音、複雑で不規則な動きを見せる
そして、
ただし、そのままの画像として利用するわけにもいかないので、あくまでモーションキャプチャ用のデータに変換してではあるが。紫音の体に数百という数の基準点を決め、それをデータとして収集しているわけだ。これについてももちろんあらかじめ承諾は得ている。
こうして得られたデータを千堂アリシアも確認するものの、
『本当に複雑で不規則な動きですね』
と感心させられる。<人間らしい動き>を再現するために多くの人間の動きはこれまでにもデータとして蓄積されてはいるとはいえ、あくまで日常的な普段の生活で主に見られるそれが主体で、ここまで不規則な動きについてはメイトギアには必要ないとされてきたため、データとしては大幅にトリミングされていたものだった。
しかし、元々千堂アリシア自身も、千堂京一の前では普通のメイトギアはしない動きを見せるので、実はそれほど遠いものでもなかっただろう。
だがそれはどこまでも千堂アリシア自身での動き。白百合2139-PB(仮)のAIにはそもそも入っていない動きであり、関節はそれを再現することを考慮して設計されていない。その意味を改めて思い知らされる。
けれど同時に、
『この動きのすべてを再現する必要はないはず』
アリシアにはそう察することができた。むしろこれをすべて再現しては、さすがに『やりすぎ』だろう。となれば、この動きの成分の一部を抽出し、白百合2139-PB(仮)で可能なそれに落とし込んでいけばいいはず。
だからこそもっと多くのサンプルが必要だ。
さりとて、
「それでは私はこれで失礼いたします」
勤務時間は過ぎてしまった。もっと二人の姿を見て紫音の動きのデータを得るべきとも思うものの、これ以上、紫音と良純の二人きりの時間を邪魔するというのも野暮が過ぎるというものだ。だからアリシアは早々に退散することにした。
白百合2139-PB(仮)が第一ラボのオフィスに戻ると、
「お疲れ様。貴重なデータが取れたみたいね」
エリナ・バーンズが出迎えてくれる。
「はい。有意義な時間でした。多くのサンプルが取れましたので、この中から白百合2139-PB(仮)の機体で再現できる成分を抽出すればいいと思われます」
アリシアもそう告げる。
しかし今日の分だけではまだ十分でないこともまた事実。明日以降も同じくサンプリングを続けなければならないのだった。
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