通りがかりの不良、千堂アリシアに憤る
リモートトラベルを行う者は少なくないとはいえ、現地を散策しているのは間違いなくメイトギア(ロボット)なので、
『ロボットが人間様を嗤うのかよ!?』
と思ってしまうのは無理からぬことかもしれない。しかしその漫画やアニメの<チンピラ>のような振る舞いはあまりに滑稽で、余計に笑いが止まらなくなってしまう。
「てめえっ!!」
その<チンピラ>、いや、この場合は<不良>か?が声を上げて殴り掛かるものの、アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様にリンクしているとはいえど中身は<千堂アリシア>なため、生身の人間の暴漢など相手にもならない。<戦闘モード>を使うまでもなく、彼女が持つ<体術>だけでするりと躱してしまう。
イキがって殴り掛かったもののかすりもせず容易く躱されてバランスを崩したみっともない姿を晒し、その不良はさらに逆上。
「やっちまえ!!」
仲間に命じた。が、そんなことを口にして行動に移せば、
「どうしましたか?」
配備されていた警察用のレイバーギアがすぐさま駆け付ける。相手がメイトギアなので<暴行容疑>には当たらず、壊れてもいないから<器物損壊>にも該当しないためにその場で取り押さえられることはないものの、応援の人間の警察官までが駆け付けて、不良達は、
「なんだよ! なんもしてねえだろ!! こいつがロボットのクセに人間様をバカにするから教育してやろうと思っただけだ!!」
などと言い訳を始めた。
まったくもって不合理な話である。ロボットに殴りかかって何を<教育>すると言うのか。ロボットは設定されたアルゴリズムによって動いているだけでしかない。それを変更するには電子的に書き換えるしかないのだが、この種の輩はそんなことさえ理解できないというのだろうか。
そうして、レイバーギアを伴った人間の警官達が穏当に説得を試みる一方で、人間の警察官が一人、
「少し、事情をお聞かせ願えますか?」
丁寧に千堂アリシアに話し掛けてきた。彼女がリモートトラベルを行っていることは、アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様がそれを示す信号を発信していることですでに把握されている。リモートトラベルを行う際には、メイトギアが主人の使いで単独行動しているのと区別をつけるために専用の信号を発信することになっているのだ。
それを受信したレイバーギアが、人間の警官が持つ端末にその旨を伝えていた。
「すいません。私の態度があの方々の癇に障ってしまったようです」
千堂アリシアは申し訳なさそうにそう応えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます