千堂アリシア、アンブローゼを知る
こうして千堂アリシアは、
<
彼を送り出した後に、部屋の片付けを済ませ、それから街へと繰り出す。
そこには無数の人間達の<日常>が溢れていた。千堂アリシアの目的は、先にも述べたように<リゾート>ではない。あくまでも、
『人間達の世界に触れる』
ことなのだ。
とは言え、<都市としてのアンブローゼ>は、元々、日本に憧れを持つ者達が中心となって作られた都市だということもあって、かなりの部分が
こうしてアンブローゼに滞在する予定だった三日間は、家出少女の件以外はある意味では<単調>とも言えるものだっただろう。
けれど、多くの人間と違って千堂アリシアはそれを<退屈>とは捉えない。むしろ、
『
こと自体に感心していたのだ。日本人が得意としていたという、
『察しと思いやり』
をよくここまで習得できたものだと素直に驚かされていた。日本にルーツを持つ人間達だけでなく、それ以外の人間達も、日本人としか思えない振る舞いをしてみせたのだから。
『列に(めったに)割り込まない』
『ゴミを(ほとんど)散らかさない』
『他者に対していきなり威圧的な態度に出ることは(あまり)ない』
もちろん、そういうことがまったくないというわけじゃない。中には行儀の悪い者もいる。けれども、その比率が圧倒的に低いのだ。
ただそれは同時に、
『同調圧力の高さ』
という方向にも作用しているようだ。
街を散策していても、ファッションの傾向が明らかに似通っているのだ。中には<自分らしさ>を演出しようとしてかやや奇抜なファッションを取り入れている者もいるものの、なぜかそういう者達はそういう者達で同系統のファッションに染まってしまっている。
『周囲に迎合しない!』
と主張している者達同士が互いに<迎合>しているという。
徒党を組んで周りを威圧しながら歩いている者達の格好が、それこそコピー&ペーストで作られたかのような変化に乏しいものであったり。
それを見たアリシアが思わずくすくすと笑ってしまった途端に、
「なんだぁ!? ロボットが人間様を嗤うのかよ!?」
と凄んできたのだった。
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