マルチタスク、その意味
ただしこれも、普通の人間では、
『三ヶ所で同時にまったく別の振る舞いをする』
のは容易ではないだろう。いわゆる完全な<マルチタスク>というものに当たるからだ。人間はよく、
『映像を見ながら食事をしながら誰かと通話する』
ということを行ったりするしそれを<マルチタスク>と称したりもするが、AIが行っているそれとは厳密に違う。AIは、ロボットに搭載されているそれも含めて、本当にまったく別の作業を並列処理しているのに比べて、人間のそれは、あくまで意識を向ける対象を頻繁に切り替えることで<ながら作業>を行っているように見せかけているだけでしかなく、
『実は意識は常にどれか一つにしか向けられていない』
のである。しかもそれをすると、それぞれの作業効率は極端に低下し、すべてが中途半端に終わるというのが脳生理学的にも解明されている。
『音楽を聴きながら作業すると集中できる』
というのは、実際には『音楽を聴く』という作業についてはほとんど意識が向けられておらず、<本人にとって心地好い環境><集中しやすい環境>を意図的に作り出すことで、
『最も集中するべき作業に意識を集中させている』
だけでしかないというわけだ。
それに対してAIは完全に独立した領域を作り出しそこでそれぞれ処理を行うことで実際に並列で作業を行っているのである。
これも、<人間にはできないこと>であり、AIやロボットに任せるべき分野とされていた。
ある意味では、Aiやロボットの場合、
『複数の自分を持つことができる』
のではなく、
『元々複数の存在だったものを一つの筐体や機体にまとめてある』
と言った方が正しいのかもしれない。ゆえに、マルチタスクを行うとしても、それを行える限度がはっきりと決まっているのだ。一般的にメイトギアに搭載されているAIの場合だと、八から三十二の作業を同時に行えるとされている。中には『百二十八のマルチタスクが可能』と謳われているものもあるが、その辺りはあくまで『同時に百二十八体のメイトギアを運用できる』というだけの話でしかなく、それぞれの機体のAIに依存した運用方法なので、<眉唾>と考えていいかもしれない。この時点での技術力では。
ともあれ、一般的なメイトギア用のAIの場合は、
『本来は八人だったもの、三十二人だったものを、一人にまとめている』
と考えることができるのかもしれない。それを必要とあれば別々に対処させられるというだけで。
それ自体が人間にはできないことなので、張り合おうとすること自体が間違っているのだろう。
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