根岸右琉澄、リンクを許可する
こうしてまずは
「それでは今から私が申し上げるとおりに設定してください」
手持ちの端末に自分が所有しているアリシア2234-HHCのアンブローゼ仕様の設定画面を呼び出し、アリシアの指示通りに設定を書き換える。これはあくまで、一般的なユーザーでも知識があればできることだった。
そして最後に、オーナーである右琉澄自身の<承諾>を行い、ネットワークを通じて千堂アリシアが<右琉澄のアリシア2234-HHCのアンブローゼ仕様>にリンクを開始する。
すると途端に、アリシア2234-HHCのアンブローゼ仕様の表情が変わった。それまでの、
<他のアリシア2234-HHCのアンブローゼ仕様と同じ笑顔>
だったものが、明らかに別のものになるのが分かった。
すると右琉澄は、
「いや~、やっぱこうしてみると千堂アリシアちゃんが特別なんだって分かるよな」
と感心する。
「ありがとうございます」
アリシアもなるべく馴れ馴れしくしないようには気を付けているものの、それでも標準仕様のアリシアとは違っているのだ。
そんなアリシアが見回すと、男性の一人暮らしにしては整頓された室内の様子が見えた。と言ってもそれは当然か。こうやってアリシア2234-HHCのアンブローゼ仕様を個人所有しているのだから、すべて任せてしまえば完璧に整うだろう。
けれど右琉澄は、
「部屋、綺麗だろ? 俺、自分で掃除とかしてんだぜ。うちのアリシアに任せっぱなしってわけじゃねーんだ。自分でやんのが好きなんだよ、特に部屋については、自分の思ってる形にしなきゃ落ち着かなくてよ。うちのアリシアには洗濯と、普段やるにはちょっと面倒な水回りとかの掃除を任せてる」
とのことだった。確かに、千堂アリシアから見える程度の表面的な行動ログにも、右琉澄の言葉を裏付ける程度の動きしか確認できない。あまり詳細なそれはプライバシーにかかわるので彼女からは見えないものの、彼の言葉を疑わなきゃいけないような形跡はなかったのだ。
とは言え、その種の拘りを持つ人間も別に珍しくはないので、最初から疑うつもりもなかったが。
それよりも、
「んじゃ、俺のもう一つの仕事に行くからよ。店の近所を散策してくれたらいいぜ」
と言いつつ、バーテンの仕事へと向かう右琉澄にさっそくついていったのだった。
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