千堂アリシア、ミュートする
『なんだい……よろしくやってるじゃないか……』
タブレット越しにニーナとアリシアの様子を見て、
実に豪胆だと言えるだろう。
なお、ニーナと安吾のこの時のやり取りはさすがに他人に聞かれては『恥ずか死ぬ』レベルだっただろうから、アリシアの判断でミュートされていた。必要とあらばアリシアの<口>を介しなくても
『どうせ、安吾と恥ずかしいやり取りでもしてんだろ。若いねえ……』
と察していた。この辺りも、出産に差し障るようなものでなければどうでもいい。むしろ産婦がそれでリラックスできるなら望むところだ。
タブレットに映し出されているバイタルデータも、まだまだ出産は中盤でしかないことを物語っていた。なら、急ぐ必要も焦る必要もない。自分の命も、目の前ですごく集中している若い医師に預けてあるのだから、それこそ、
<まな板の上の鯉>
状態である。気にしても仕方ないし、ニーナの出産が終わるまではもたせてくれると言った。さらには、自身のオペの様子も別のタブレットに映し出されていて、自ら確認することができた。その藤田医師の手によるオペは、
『これあすごいね……私なんか足元にも及ばないよ……』
『時代ってのは先に進んでるってことだねえ。私だってまあまあ自信はあったんだけど、上には上がいるってことでもあるさね……』
そう考えると、
『なんか、まだ生きられそうな気がしてくるよ……』
とも思わされてしまった。
そうだ。覚悟はしたものの、まだもう少し生きながらえさせてもらえるなら、他にも気になる患者はいる。
『
などと、
『その辺りも欲張っちまうじゃないか。まったく、罪深いもんだよ。医療ってのは……』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます