千堂アリシア、祈る
こうして救急ヘリが
ただし、それもどこまでもつのかは予断を許さない状態だ。
だからこそ血圧のコントロールが求められる。
と、その時、フッと
医師の指示がなければ、救急救命処置、応急処置以外の医療行為ができないのだ。
ただ、同時に、出産というのは、始まってしまえばそれを中断することはできない。ゆえに、医療行為には当たらない範囲での補助と、救急救命に必要な最低限の処置は行える。
<会陰切開>はできないが、<万が一の蘇生措置>は行えるということだ。産婦だけでなく、新生児に対しても。
さりとて、
『お願いします。このまま無事に推移してください……!』
千堂アリシアとしては祈らずにいられなかった。蘇生措置は行えたとしてもその後の医療行為は、医師の指示がなければできない。それがどのような影響をもたらすかは、なってみないと分からない。それは嫌だった。
『
祈りつつも、ニーナの出産を見守る。ここまでのところは順調だ。胎児にも異常は見られない。
分娩が始まってまだ三時間余り。初産では丸一日かかるようなことだって珍しくない。焦っても仕方がない。仕方ないが、焦れる……
さらに一時間が経過。大雨暴風警報が解除され、
「ニーナ!」
学校に避難していた生徒とその家族も、安全が確認された自宅に帰ったことで、安吾が学校のことを用務員に任せ、
「しーっ! しーっ!」
慌ててドアを開けた安吾に、立志が口に指をあてる。
「静かにしろ! オペ中だぞ!」
「あ、そうか……!」
その中で、安吾だけがいてもたってもいられずに来てしまったのだ。まあ、彼の場合はニーナの出産という事情もあるので、これは大目に見てもらえるだろうが。
「で、どうなんだ?」
安吾が問い掛けると、
「まだまだ時間はかかるそうです。でも、僕のアリシアが対処してますから、ご安心ください」
秀青がとても落ち着いた様子で説明する。しかし、そんな秀青を見て、
「誰……?」
安吾は呆気にとられたのだった。
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