辻堂ニーナ、経緯を語る
「私は別にロボットが嫌いとかそういうのはなかったんですけど、彼は『なんか嫌な感じがする』って言ってロボットに近付こうとしなかったんです」
ニーナがそう言うように安吾も、
『メイトギアが生理的に苦手』
というタイプだった。特別何かがあったというわけでもない。ただ『生理的嫌悪感がどうしても拭えない』というだけだった。
だからこそ<テロ>という行為にまでは至らずに済んだというのもあるだろう。加えて、本人が幸せだったのも大きいと思われる。家族に恵まれ、友人に恵まれ、そしてニーナとの交際も上手くいっていた。
もちろん、些細な感情の行き違いなどはあったものの、その程度であれば人間同士ならおよそ誰にでもあることだろうから。
「そしたら彼、『勝手にしろ!』って言って拗ねちゃったんですよ? ほんと、子供なんだから……!」
ニーナの誕生日プレゼントにと用意してくれたアクセサリが、実は彼女がすでに持っていたものと重なってしまって、
「交換してくる!」
と言う安吾に、ニーナが、
「あなたが選んでくれたものなんだから、これでいい」
と応えたら、
「同じものがあっても仕方ないだろ!」
などとムキになって、それでニーナも、<売り言葉に買い言葉>で、
「私がこれでいいって言ってんの! なんで分かんないの!?」
つい強めに言ってしまったら、
「勝手にしろ!」
と吐き捨てて黙ってしまったのである。これは確かに安吾も大人げなかったが、
「でも、私も言い方が悪かったと思うんです……」
アリシアに向けて苦笑いを。その顔には、いくつもの汗の雫が浮かび上がっていた。出産の痛みを軽減するための麻酔により苦痛は和らげられているもののやはり肉体的には負担もある。彼女の体は胎児を送り出すために全力を尽くしているのだろう。その何とも言えない感覚がニーナにとっては不安だった。だからこうやって話をすることで紛らわせようとしているのだ。
本来ならここに安吾がいるはずが、爆弾低気圧の影響による荒天のため、それは叶わなかった。ゆえにアリシアが可能な限り補う。
もちろん、完全ではない。アリシアは安吾ではないのだから。それでも、その場で用意できるもので対処するしかないのも事実ではある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます