ジョセフ・ランディア、少女に笑顔を返す
こういう時、普通のフィクションならジョセフ自身が女性(少女の母親)を救出するのが一般的であろうが、人の世というものはそう単純なものでもなく、彼自身はいかに屈強そうに見えても生身の人間なので、さすがにお腹の大きな妊婦を安全に抱きかかえるほどの剛力無双でもなかった。今回の場合、確実に安全に救出するにはこれが<最適解>とまでは言わずともそれなりに有効だっただろう。
ジョセフにリスクを負う覚悟があるのなら。
病院も、怪我人なども対応で混乱はしていたものの、受け入れてもらえ、滞りなく引継ぎを終えたジョセフが現場に戻ろうとしたところに、
「ありがとう! ポリスオフィサー!」
声が掛けられた。あの少女だった。恐怖のあまり声も出せなかったのが、安心したことで笑顔も取り戻したようだ。
尊敬のまなざしで自分を見つめる少女に、ジョセフは、
「おう! パパとママを大切にな! じゃ、他にも助けを待ってる人がいるから、ポリスオフィサーは行かなくちゃ!」
親指を立てて笑顔を返した。
この時の経験が元で少女はやがてポリスオフィサー(警察官)を目指すことになり、そのなかでジョセフと運命の再会をすることになるのだが、それはまた別のお話である。
これと同時刻、また別の場所では、民間サルベージ会社<コンクィジータ社>の代表兼オペレーターのディミトリス・メルクーリが、自身が所有するレイバーギア<クンタッチLP400S>と共に、市民の避難を誘導していた。
かつて、アフリカ内海で
「慌てなくていい! 落ち着いて確実に移動しろ!」
そう声を上げる彼も、実は第三次火星大戦で従軍した経験を持っていた。ただ、彼が経験した戦場は大変に苛烈な撤退戦であり、そこで多くの戦友を喪った過去から、普段はそのことを他人に話したりもしなかった。
しかし、こうしてテロなどに遭遇すると、かつての経験が頭をよぎるのか、黙って見ていられないようだ。
なお、彼が現在連れているクンタッチLP400Sは、第三次火星大戦で共に戦った軍用レイバーギアのデータの一部を引き継ぐ、まさに<戦友>でもある。
もっとも、現在では二代前のモデルであり、旧式なことは否めないのだが。
ちなみに彼の<相棒>である<カルキノス02>は、ザ・ビッグに面した港でスタッフと共に待機中だ。
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