エリナ・バーンズ、歓待を受ける
かつて<飲みニケーション>とも呼ばれた従業員同士の個人的な親睦会は、今なお形を変えつつも残っている。
飲酒を伴わないただの食事会や、それこそ同じ趣味を楽しむという形で。
ただし、それを強要するとすぐさま訴えられたりすることもあるので、注意は必要である。普段から良い関係を築いていなければ親睦を図ることさえ難しい。
つまり、
『仕事を離れれば気さくないい人なんだけど……』
というのは通じないと言うべきか。
意図的に、
『普段は厳しいけれどプライベートでは優しい』
などというギャップを演出しようとするような上司は嫌われる。それが通用するのはもはやフィクションの中だけだ。
他人を敬うことができる人間は、普段の様子からすでにそれが見えているということだろう。
いずれにせよ、その点ではエリナ・バーンズは、普段は凛とした姿を見せながらも他人を敬う姿勢は見せているので、彼女を慕う職員も多い。
一方、ロボティクス部門統括技術主任である
『技術者としては尊敬しているものの、プライベートではあまり付き合いたいと思えない』
というのがもっぱらの評価である。
が、
それでいて技術は確かに飛び抜けているので、優秀な人材として必要とされている。
他の職員との間を、メイトギアがフォローしてくれている状態だ。
獅子倉や姫川の独特な言い回しを、二人のサポート役として付けられたメイトギアは余人にも理解しやすいように意訳し、伝えてもくれる。それ用に最適化されたメイトギアを二人はそれぞれ従えていた。
とは言え、決してでしゃばることもしないので、実はそれほど目立たないし、自身が間に入らなくても伝わっているようであれば口出しもしない。
職場内ではもうほとんどの職員が慣れているので、メイトギアが間に入らなくてもほぼ通じているようだ。
それは余談として、今は取り敢えずエリナ・バーンズを中心とした親睦会である。
彼女は英国が中心になって作られた都市出身ではあるものの和食党で、今日も<ネオ懐石>と呼ばれる料理を出すレストランに部下とアリシアを連れて訪れた。
「あら、バーンズさん。いらっしゃい」
すっかり常連なので、彼女を知る店員も多い。
「ちょうどいつもの部屋が空いてますよ。どうぞこちらへ」
慣れた感じで案内され座敷へと上がるエリナに、アリシアもついて行ったのだった。
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