エリナ・バーンズ、前置きなく問い掛ける
「いつも通り、私のおすすめメニューに関しては奢り。それ以外は自腹でね」
部下やアリシアと共に座敷に上がったエリナ・バーンズは、それを承知している者達ばかりなのは分かった上で念の為にそう告げた。この辺りの確認を怠るといろいろ面倒なことにもなるご時世だからだ。
しかし、一緒に来た部下はそれについても承知しているので、
「分かってますよ」
と笑顔で返す。
が、アリシアはそれについては初めてである。
と言っても、彼女は飲食はできないしする必要もないが。
するとエリナは、アリシアを自分の隣に座らせ、
「今日はあなたと一杯話がしたいんだ。仕事のことじゃなくてね」
そう満面の笑みで話し掛けた。
「なんでしょう?」
いつものこととして段取りができている店側がてきぱきと用意をしてくれて、部下達も心得たものでそれぞれ勝手に食事を始める中、アリシアはエリナを見詰めた。
そんな彼女に、絵里奈は、
「ぶっちゃけ、あなたの御主人様は結婚とかする気あるのかな?」
いきなり前置きなく要点から切り込んだ。それが彼女の目的だった。
それでさすがにアリシアも察した。エリナが
正直、いい気はしなかった。何しろ自分は家族同然に千堂と一緒に暮らしている。そんな自分にそれを訊いてくることについては。
ただ、回りくどくあれこれ策謀を巡らされるよりはずっといい。
だから、
「そうですね。今のところはまったくご予定はないようです」
正直に応えさせてもらった。するとエリナは、
「つまり、お付き合いしてる女性とかもいないということでOK?」
念を押してくる。
それに対しても、アリシアは、
「はい、そういうことでいいと思います」
と応えた。
そんな彼女の言葉に、エリナが、
「あなたって、正直者なのね」
微笑んだ。そして。
「あなたも彼のことが好きなんでしょう?」
歯に衣着せずストレートに問い掛ける。
「!? あ…はい…そうで、す……」
あまりのストレートさに思わず言葉に詰まった。
と言っても、アリシアは本来はロボットなので、正直で当たり前だった。ロボットは嘘は吐けないからだ。アリシアも嘘は吐けないものの、言葉を濁すくらいのことはできる。遠回しな表現くらいならできるのだ。なのにそれさえしないアリシアに、エリナは、
「……負けた負けた。あなたみたいな子が傍にいたら、そりゃ他の女性に目は行かないよね」
肩を竦めながら頭を横に振ったのだった。
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