千堂アリシア、親睦会に誘われる
とは言え、負けたことは悔しいものの、
そもそもアリシアが一番望むことは人間を守ることであって、敵を撃破することじゃない。最重要なのは『負けないこと』なのだ。
守るべき対象を守りきれれば他に損害があっても納得できる。自身も含めて。
その後、アリシアが目を覚ました時には終業直前だった。
「何か申し訳ないです……」
目を覚まして部屋から出たところにたまたま通りがかった
敷島も彼女が寝ているところは見ていたので、
「いいよいいよ、気にしないで。事情は分かってるから」
と気遣ってくれる。
それがまたアリシアには嬉しかったのと同時に申し訳なかった。
だからこそ、今は
終業時間を迎えて帰り支度を始める。
今日は千堂が役員としての仕事が残っていて、一緒に帰ろうと思えばあと数時間は待つ必要があった。
そんな彼女に、
「もし良かったら私達の夕食に付き合ってくれない?」
部下数人を連れたエリナ・バーンズが現れ、誘ってきた。
「え? 私でいいんですか?」
思いがけない提案に、アリシアは戸惑う。無理もない。彼女はロボットなのだから、そもそも飲食はできない。
「あ~、いいのいいの、ただの親睦会だから。飲み食いはあくまで建前。職場では憚られるような砕けた話がしたいだけよ」
職場での毅然とした姿とは違う彼女の様子に、アリシアはまた戸惑う。人間には様々な一面があることは知っていても、ただのメイトギアだった頃にはそれを何とも思わなかったものの、今では何だか不思議に感じてしまう。
でも、こうして誘われたことは悪い気はしなかった。
なんだか今まで以上に人間の仲間として認めてもらえた気がして。
そこでアリシアは、
「ちょっとお待ちください」
とエリナに断りを入れた上で、千堂に、
『千堂様。バーンズ様から親睦会のお誘いをいただきました。私も参加してもよろしいでしょうか?』
自らの通信機能を用いてメッセージを送る。
するとすぐさま、
『アリシアが良ければ私は構わないよ』
と返信があった。アリシアからのメッセージについては優先的に応答するようにしていたからだ。
それを受けて、エリナの方に向き直り、
「分かりました。私でよろしければ…!」
と応える。
「良かった! じゃあ、行きましょう♡」
満面の笑顔のエリナに迎えられながら、アリシアはオフィスを後にしたのだった。
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