第3話

「おっはよう!今日は君たちにとって忘れられない日になるだろう!喜べ!転入生がこのクラスに来るぞ!飛び切りの美少女だ!俺もあと10年若ければ参戦したいくらいの美少女だ!今年の文化祭のミスコンはこのクラスで独占できるぞ!」

本鈴と共にやってきた担任、杉岡 彰造すぎおか しょうぞう(40歳独身、国語教師。どこぞのテニスプレイヤー似)が、テンション高く勢いよく入ってきた。

その言葉を聞き、クラス全員、主に男子が期待の籠った、いや、欲望の籠った眼差しで入り口を見つめた。

「それでは!入ってきてもらおう!絶世の美少女だ!さあ、優羅ゆうら まどか君入ってきたまえ!」

「すみません。そのように紹介されると入りにくいのですが。」

少しあきれたような雰囲気を醸し出しながら涼やかな声を発しながら一人の少女が入ってきた。担任に勧められるまま、教壇に立ったのは、確かに美少女だった。小さな卵型の顔に美しいバランスで配置された目鼻立ち。腰まで届くつややかで淡い栗色の髪。出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる理想的なスタイル。


一瞬でクラス中の人間の目を奪われた。


そんな中彼女は黒板にきれいな字で自身の名前を書いた。


優羅ゆうら まどかです。ご迷惑をかけるとは思いますが、よろしくお願いします。」

優美にお辞儀をした彼女。杉岡すぎおか先生はそんな彼女を見て

「さて!挨拶が終わったところで、待望の質問タイムとしようか!幸い伝達事項もないからな!さぁ、どんどん質問しろ!10分もないぞ!」

「彼氏はいますか?」「好きな人はいますか?」「誕生日は?」「血液型は?」「3サイズは?」「下着は何色?」「Sですか?」「完全犯罪に興味はありますか?」「罵ってください。」「踏んでください。」「靴舐めさせて。」

「落ち着け!野郎ども!馬鹿なのか?アホなのか?ここぞとばかしにセクハラすんじゃねぇ!とりあえず野郎どもの質問は、彼氏の有無とタイプと血液型、誕生日だけ答えられる範囲で答えてくれ。後は、女子の質問だけ受け付ける。」

「皆さん楽しい方ばかりですね。誕生日は5月4日、血液型はO型です。彼氏はいませんが、気になる人はいます。」

「それって前の学校の人ですか?」

「違います。これ以上はノーコメントでお願いします。」

「じゃあ、趣味は?」

「旧跡めぐりと料理です。」

「料理って何が作れるの?お菓子とか?」

「基本何でも作れますよ。好きな人に美味しいって食べてもらうのが夢なんです。」

そんな可愛らしい答えを聞いてクラス中が色めきだった。

「さて、盛り上がってきたとこ悪いが、そろそろ時間だ!続きは次の休憩時間まで取っておけ!ああ、そうだ。あの一番奥の窓際に席を用意したからそこに座ってくれ!」

「はい。」彼女はうなづくとまっすぐ示された席に移動を開始した。

俺の机の横でいったん立ち止まり、「よろしくお願いします」と手を出してきた。

それに応えようと差し出された手を取り、彼女の目を間近で見た瞬間、理解不能な感情が襲ってきた。

そして、時が止まった。




「っ!なにやってるのっ!しょう!」


静寂の中、君佳の声で俺は自身の状況に気付いた。涙を流しを力いっぱい抱きしめているという状況を。

そして、クラス中の俺の行動で起こっていた静寂が破られ、時が動き出し、周りの突き刺すような殺気の籠った視線と非難の声が突き刺さってきた。

 



慌てて彼女と離れようとした時、不意に耳元で「大丈夫だよ。私はちゃんとここで生きてるよ。」という声が聞こえた気がした。


「ごめん。初対面の人に涙を流しながら抱き着いて。何故かわからないけど体が勝手に動いてて。」

うろたえながら自分でもわけのわからない言い訳をしながら誤ったが、優羅ゆうらさんは微笑みながら「気にしないで」と許してくれた。が、杉岡すぎおか先生からは「桧山ひやま放課後職員室な。」というありがたいお言葉を受け、ホームルームは終了となった。


気まずい一限目を終え、改めて謝ろうとに声をかけようとしたら、クラス中の人間が彼女のもとに押し寄せてきた。俺は押し出され、輪に混ざらなかった飛鳥あすかと遠巻きに眺めていたが、授業中、まぁ今もだが、感じている居心地の悪さを解消すべく行動を起こそうとした。

その時、別の強い視線を一瞬だが感じ、視線の方向へと目を向けた。

そこには転入生恒例の質問攻めにあうという儀式が行われている中心地だった。

ただ、あまりの無秩序な質問の嵐だった為、は答えるのに大変そうしていた。

そんな彼女に遠くから目を向けてたら一瞬、目が合った。

さっきの視線の主が彼女だと確信が持て、その目を見て助けを求めていると感じた俺は、さつきのもとに進路を変更した。


「何か用かしら。浮気男の変態さん。あまり近づかないでくれます。」

蔑んだ目で当たり前のように罵声を浴びせてきた。

まぁ、無意識とはいえ自分でもと言い切れる行動だった。

での自身の過ちなので甘んじて受け入れ、を助けるべく、さつきに声をかけた。

「悪いけどさつき、が困ってる。まとめてきてほしいんだけど。」

返事と共に、真面目な顔でさつきは問いかけてきた。

「わかったわ。確かにあれじゃあ収拾がつかないわね。助けてくるわ。だけど、…ねぇ、しょう優羅ゆうらさんと知り合いなの?」

「いや、…知り合いじゃないけど。ただ、知らないけど知ってるそんな感じがするんだ。自分でも何を言ってるかわかんないけど…。」

「でも不思議ねぇ。実際、性格上あなたが初対面の女子にあんなことはしないってわかってるし、一瞬まるで甘い雰囲気を感じたからそう思ったんだけど。それにあなた自然に彼女のこと名前で呼んでるから。それとも最近見始めた夢のせいかしらねぇ。」

その言葉を聞いて俺は、自身の感じていた違和感に気付いた。何故、自然に名前で呼び、目を見ただけで彼女の考えがわかることが当たり前だと感じていたことを。

「夢のこと、君佳きみかからきいたのか?まぁ、関係はないとは思う。自分でもわからないけど。不思議とそれが当たり前だと体が感じてるみたいなんだけどね。だけど、確かにおかしいと俺も感じてるから、気を付けて意識して行動するよ。…それと君佳きみかのことだけど、フォローお願いしたいんだ「そこは自分で何とかしなさい。」んだけど。」

かぶせ気味に断られた俺は、「じゃあ、優羅ゆうらさんのことは、よろしく。」と頼んで君佳きみかのところへと向かった。

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世界を救うただ一つの方法 @lmv314

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