第54話 皇子達の秘策
深夜、皆が寝床に着いた頃、ジャンヌはチヨの寝室をソット訪れた。
侍従と護衛は忍び込んだのがジャンヌなので何も言わずに通した。
義理の姉妹に成ったのだから止める理由は無かったのだ。
但し母ペネロペには報告するつもりだ。
「ふふん、まさかその日にスグ来るとは思っていまい」
まるで夜這いに来た男の様な事を言いながら、ジャンヌは自分自身に興奮を覚えていた。
天蓋付きの豪奢なベッドに近づくと躊躇なく布団に手を掛ける。
バサッ、
ジャンヌがチヨのベッドの布団をめくると、ピンクのウサギを抱いたジェルソミーナ公爵令嬢が千代に寄り添ってスースーと寝息を立てていた。
「クゥゥゥ、悔しい。こんな小娘に先を越されていたとは!」
反対側に回り込んでチヨを覗き込むと、そこにはスヤスヤと眠るチヨの寝顔があった。
「ウグッ! 狭いな……流石にここに潜り込むことは出来ぬか。仕方ないが公爵一家が帝国に帰るのを待つとしよう」
ギイィ、カタン。
「「「「「「ゥワッ!?」」」」」」
諦めて部屋を出ると、廊下で六皇子とバッタリ鉢合わせしてしまった。
「おやおやぁ、皇子殿、この3階は女性専用フロアですがっ?」
「え、えっとぅ、トイレはこっちではなかったかなぁ?」
「フンスッ、2階の男性専用フロアにもトイレがありますがっ?」
「そ、そうか……それはそうと、ちょっとお邪魔させて貰おうかな、麗しき御令嬢とお話などと思うんだが?」
「ほう、誰とだ! 私か? ジョセフィーヌか? まさかミーナか?」
「ジャンヌ嬢……と」
「剣術稽古で私に勝てたら受けてやろう!」
「うぐっ……またくる」
「ア~ハッハッハ~……」
ゴトン、
皇子の1人チョロリッヒが踵を返す時に、懐に隠し持っていた蜜酒(はちみつしゅ、ミード)の瓶を床に落とした。
「ほほう!」
ジャンヌは熊人族の血を引いている為にハチミツに目が無かったので、蜜酒の匂いに心を奪われる。因みに熊は犬よりも鼻が利くと言うが、熊人族もそうだった。
「ふむ、良い物を持ってるではないか。 よし、俺の部屋へ来い。飲み比べをして俺に勝ったら嫁になってやるぞ!」
「「「「「「エエッ!」」」」」」
「いいんですか? 行きます、行きます、スグ飲みましょう!」
六皇子は一斉に懐から出した蜜酒の瓶を掲げてジャンヌに見せつけた。
(へへ、俺達に酒で勝てると思ってるぜ)
(酔い潰して可愛がってやろう!)
(((((そうしよう!)))))
「さあ、入れ!」
「「「「「「お邪魔しま~す」」」」」」
ギイィッ、バタンッ!
ドカッ!
ウウウゥゥゥ……、
数時間後、ジャンヌが臥せってる皇子の背中に蹴りを入れた。
グーグー、ガーガー、スピースピー……、
「どうしたどうした! もう終わりか? まだまだ酒は残ってるぞ! ア~ハッハッハ~」
ドカッ!
ウウウゥゥゥ……、
ジャンヌはつま先で皇子の頭をグリグリと小突いた。
床には皇子が持ってきた蜜酒瓶と、ジャンヌが侍従に持ってこさせたロワール産のワインボトルが散乱している。
空き瓶の間に、皇子達全員も酔いつぶれて床に転がっていた。
「むにゃむにゃ……ジャンヌ様ぁ、僕の頭も~……」
翌日、六皇子とレドケルン公爵一家は【転移門】でパインフィルド帝国へと帰って行った。
〇 ▲ 〇
間もなくしてジャンヌとチヨは、皇子達との婚約が決まります。
そして、皇太子妃にジャンヌが、ルクセンブルク大公国妃にチヨが成るのでした。
結婚後も2人はとても仲が良く、陰の実力者として、帝国を平和に運営していきましたとさ……。
めでたしめでたし。
勇者召喚されたのは「キグルミの中の人」でした!~人見知り腐女子なので魔法少女になんて成れませんし魔王討伐もできません~ まきノ助 @mayu49nancy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます