44
「知らないもの触ったり、口に入れたりするんじゃないよ…って、ほんと御前、怖い者知らずだなぁ」
ってまたからかわれたから面白くない。
「怖い者知らずって言うか俺だってコレが毒ウニだって解ってたら触らないよ」
御前のせいだ、ってガンガゼ埋めてやれってつま先で砂を掛け始めたら、竹兄に「まて」って肩掴まれて止められた。
「ただな…。実はそれが意外に美味いのを俺は知ってる」
「え!?コレ食べられるの?!」
凹んで落としてた首を急に上げて振り仰いだら、竹兄は親指立てた右手の握りこぶしを俺に突き出して凄く良い笑顔を見せた。
「そいつに毒があるのはトゲだけだ。九州の方では実際獲って喰う地域もある。俺も海洋生物の研究室で喰った事がある」
フォローしてもらえた気がしたから、
「じゃあ俺沢山とってくる!!」
って走り出そうとしたのに。掴まれてた右肩を押さえられて竹兄に止められた。
「待て。沢山は駄目だ」
「え?何で!?」
「日本の海岸線はほぼ全部『漁業権』ってのが設定されてるんだ。そいつも普通は喰わないって言ったってウニの仲間だから、勝手に採ったり食ったりするのは犯罪になる」
知らないってだけで、何かしても犯罪者になるかもしれないって言われて衝撃だ。
「そうなんだ…」
って、俺の気持ちを呆気なく上げさせたり下げさせたりして半ば面白がってるんじゃないか、って思い始めた俺に、竹兄は最後の答えをくれた。
「――とはいえ。一応此処岩場は観光案内にも『磯遊びや採取が出来る』って書いてあるくらいの処だし、とっ捕まりはしないだろ?取り敢えず食材は持ってきてるんだ。俺は要らないから、試しに御前が喰うくらいの数だけ獲れよ。それと、岩場は裸足厳禁。滑るし、知らない間に足の裏を怪我して血まみれなんてザラだ。行くなら濡れるのは我慢してちゃんとシューズ履いていけ」
ほら、コレに入れて来い。って竹兄に空のクーラーボックスとトンクを手渡された俺は。
「解った」
言われた通りちゃんと靴履いて。クーラーボックス抱えてまた磯の方に走って行った。
トンク使って針に触らないように気を付けながらクーラーボックスに次々「ガンガゼ」を放り込んで。閉じた蓋に針が届くくらい溜まったの見てようやく、
『食べられるだけ採って来い』って竹兄に言われてたの思い出してこれ以上採るの止めて竹兄の居る砂浜に戻った。
「どれくらい獲ってきた」
グリルの上で脂の爆ぜる音立てていい匂いさせてる肉とか野菜とかをひっくり返してた竹兄に聞かれて。
「あ…うん」
抱えてたクーラーボックスの蓋を開けて数えてから、
「20個くらい…」
結構採ってきたなあって思いながらクーラーボックス傾けて竹兄に見えるようにしたら、ちょっと中を見た竹兄が、
「まぁそんなもんか。処理は時間がかかるから、こいつを喰ってからにしよう。――ほら、腹減っただろ?」
って差し出された皿とフォークを手に持って待ってたら、竹兄が一口じゃ食べられないくらいの大きな塊肉とスペアリブを次々載せてくれた。
「すげぇ!美味そう!」
「あのなぁ。『美味そう』じゃ無くて美味いぞ?」
って言われて、自分が腹が減ってたの忘れて海に夢中になってたの思い出した。
「いただきマース」
って、手を合わせて挨拶してから。
「ハイハイ召し上がれ」
竹兄の声聞きながら早速スペアリブの骨の両端を指先で抓んでかぶりついたら。
「――あっつい!!けど…」
唇火傷したんじゃないかってくらいの熱さに思わず口を離したけど。もう一回かじりついて、歯で肉を骨から引きはがした。
「うまい!!」
もぐもぐしてる間に。
「良いリアクションだなー。ほら、もっと食え」
竹兄は俺が持ってる皿に魚介や茸やズッキーニをどんどん積んでいく。
「待って竹兄!早いよ~!」
これ以上盛ったら崩れる、って思ったから慌ててストップかける。
「御前のお世話してたら俺が喰えないだろ?最初だけだよ。――ほら。後は自分で好きなようにやれ」
ってトングを渡されたから。
そう言えば俺、この旅行は竹兄にくっついて来ただけで、手配も運転も飯の準備も全部お任せだったことに漸く気づいて申し訳なくなった。
「ゴメン…後は俺が焼くから。竹兄は食べてるだけでいいからね?」
俺が出来ることくらいはしようと、まだ何も乗っかってない皿を取り上げて、網の上で焼きあがってもう後食べるだけの状態になってた肉や野菜を食べやすいように皿の上で崩れないように考えて盛り付けてから竹兄に差し出した。
Still...(弟目線) 白白 @tukumomashiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Still...(弟目線)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます