第2話 ーーRenatusーー
(一体何が起こったって言うんだ......)
俺は、まだ理解が追いついていなかった。突然の発光。少女の口から聞いた無機質で、まるで機械音声のような声。そして、「720時間」。
「あの......」
(遺跡はしばらく稼働していなかったはず、何らかの原因で、遺跡が活動を再開したのか? だとしたら原因はなんだ?突然の強い発光。あんなのはあの日以来......)
「すみません! 聞いてますかっ! さっきから何回も話しかけてるんですけど!」
目の前の少女は既に起き上がっており、腰に手を当て頬を膨らまして怒っている。
「あ、ああすまない。少し考え事をしていた。それよりいったい君は?」
しばらく拗ねて石を蹴飛ばしていて、ちょっと機嫌が悪そうだったが、俺がようやく返事をしたからか少しは気を直してくれたみたいだ。
「そうですか......というか話聞こえてて無視してませんでした?! ......まあいいですけど。それはともかく私、何にも覚えてないみたいなんです。生活に必要なこととかはしっかり覚えているんですけど、ここにきた理由とか私の名前とかもさっぱりで......」
どうやら彼女の言っていることは嘘ではないみたいだ。俺は昔から人が嘘をついている人をみるとその仕草とかちょっとした目の動きでわかってしまうのだが、彼女にはそんな様子はまったくない。
「記憶喪失なのか......」
「そうみたい、じゃあ私そろそろいくね。あなたは私の事知らないみたいだし。」
そういうと、彼女はさっき入ってきた遺跡の入口へと歩き出した。
「待ってくれ!」
「え?」
彼女はこちら側に振り向いた。
「君だけが、手がかりなんだ。結衣が......居なくなって俺は、俺は......」
俺はその場で情けなく泣き崩れてしまった。なにも見つからないだろうとダメ元できたこの遺跡で、俺は謎の少女にであった。そんなたった一つの手がかりを失えば......
「え、え、ちょっといきなり泣くとかやめてよね。私が泣かせたみたいじゃん! きくから! ねえ話聞いてあげるから泣くのはやめてってば。」
そういうと彼女は俺の方へと駆け寄ってきた。案外優しいのかもしれない......
「実は......」
俺は今まであったこと、そしてこの時代のことを短くまとめ、彼女に話した。
「......そういうことだったのね。ごめんなさい私......」
「いや、いいんだ。君も目覚めた後で混乱していただろうしね。」
「......それじゃあ話をまとめると、あなたは結衣さんの死の真相を確かめるために私のことがの事をよく知りたい。そして私は今後住む場所を提供してほしい。それにこの世界のことをもっと詳しく知っておきたいし......お互いに不利益はないよね?」
「住む場所って......俺の家に住む気なのか?!」
「当たり前じゃない。それともみ寄りのない少女をこのくらい遺跡に一人で置いていこうってわけ?」
「いや、身寄りのない少女を家に連れ込む方がよっぽど問題だと思うんだが......まあ、わかったよ。君のいう通りお互いに不利益はない。交渉成立だ。」
「やったー!」
彼女は嬉しそうに跳ね回っていた。
「まったく......ただで泊めてやるんだから仕事くらいしろよな!」
「え......お仕事ってどんなご奉仕を、まさか夜の......」
彼女は蔑んだ目で俺を見つめる。
「ち、違うわ! 家事とかそうゆうことにきまってるだろ!」
そういうと彼女はほっとしたような顔で、
「そういえばまだ名前を聞いてなかったね。あなたは何ていうの?」
「ヒカルだ。苗字は......いや、今はただのヒカルだよ。」
「何やら含みがあるようだけど......まあきかないであげましょう! 私は......」
そう彼女が名乗ろうとしたが彼女は戸惑っていた。
(そうか、何も覚えてないいないんだったな......)
ふと彼女をみていたが、今まできづかなかったが首元に何やら紋章が浮かび上がっている。
「君、その紋章って......」
彼女も今気づいたようで驚いていた。
「これは......古代文字か。」
ーーRenatusーー
ローマ字に直すとそう書いてあった。意味はわからないが。
「レナトゥス......それが君の名前なのか?」
「わからない......でもとても強い力を感じるの、その言葉から。」
「そうか、じゃあおまえは今日からレナだ。名前がないんじゃ呼びづらいだろう?」
「......わかった。それじゃあよろしくね、ヒカル!」
そう言い彼女は微笑んだ。言葉にはしていないが彼女はレナという名前をとても気に入ってくれたようだ。
「それじゃあいくか......」
「うん。」
そうして俺たちは遺跡を後にするのだった。
21gの代わりに〜それでも僕らは変われない〜 えあのの @airnono
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