最強ゆえの、縛りプレイ。

 創作には最強が溢れている。


 スポーツの世界にも使われるが、文章や漫画で描かれる最強は、盛者必衰のことわりを概念とハッタリで跳ね返す力がある。


 故に、最強は常々、生み出され続ける。


 新たなエントリーをご紹介しよう。


『三度目勇者の世界救済 だけど今度は自分救済の為に後進育成頑張ります』

作・こたろう(敬称略)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893984998


☆竜も悪魔も敵わない、最強勇者が弟子と一緒に邪神退治も頑張ります


〇作品概要

一度目は邪悪なドラゴン。二度目は悪魔の軍勢。そして今度は、邪神!?

世界にその運命を弄ばれた世界救済の勇者にして英雄ベイクは己の定めを変えるべく、神子セキレイを弟子に三度目の世界の危機に立ち向かう。


〇祖父江のレビュー


Title:世界を救うお仕事も、三回目だとダレてくる。


 何かの罰ゲームなのか、ブラックバイト勇者なのか、数百年スパンで世界を三回も救うことになった英雄の話。


 その名もベイクさん。ちょいくたびれたピースメーカー。見た目は大人。精神は1000才くらい。バトルになるとちょっとテンション上がっちゃう憎めない奴。


 ちなみに、伝説を記した本では女体化しています。英雄は女体化される(O田信長「それな」)


 白金髪の女の子を弟子にとって、後進育成などしていますが、「ビュッと来たらバシッと」なミスター方式です。分からない方は『長嶋茂雄 指導法』などでググってね。


 小説の細かい気に入った部分についていうと、敵キャラの造形にクトゥルフを採用しており「さすがに年俸0円の1000年プレイヤーでも勝てんのか?」な不安感を煽ることに成功しています。今のところ、楽勝ですが。


 余談ですが、ピースメーカーというのは世界でもっと有名な銃の名前でもあります。平和をもたらす道具。ベイクさんに、道具として以外の生き方は訪れるのか、結末を楽しみにしておきます。


※完結追記


 アンチヒーローでもあり、ダークヒーローでもあり、しかしやはりヒーローだったベイクさん。流転るてんの英雄としての運命はまだ続きそうですが、希望は常にあると思える終わり方でした。


 とはいえ、もうちょっと読みたいというのもあります。


 縦軸の話が一旦終幕してからエピローグとして、ベイクさんがいろんな世界を救ってきたエピソードが語られるわけですが。


 これ、無限に語れますね。


 江戸時代のSUMOUに薫陶くんとうを受けたり、魔導師の姫様と一緒にロボット兵器とドンパチボコスカ楽しく戦争してたり。


 まだまだ終わらない終われない小説であると思います。


 ひとまず、運命に縛られた英雄の700年が積み重なった物語、楽しめました。読んでみてください。



〇最強を使い倒す


 さながらアクションゲームのツールアシストプレイのような、もしくは強くてニューゲームを難易度ベリーイージーでやるかのような、ぬるいを通り越して虚無の作業と化した蹂躙じゅうりんを繰り返す最強主人公に魅力は感じない。


 だが、それを裏返して「辞めたくても辞められない」悲哀を設定したのが、面白いところだった。


 主人公ベイクには、主体としての自由が与えられていない。レビューにも書いた通り、流転の運命と不死身の身体という呪いの装備を付けた縛りプレイを敢行している。


 仕事として見れば「世界を救って英雄と讃えられてるから報酬はなしでいいよね」と、見事なやりがい搾取も完備だ。


 なぜこうなったのかは今一つ要領を得ないが、すっかりやさぐれてしまっている割には戦闘に入ると妙に気張ってノリノリになっていくところなど見るに、暴れん坊の戦闘狂がおイタをし過ぎて罰を与えられたのではないかと思えてくる。


 基本的に軽快な作品なので、特撮ヒーローでも見るような気分で読んでいただくといいと思う。


 

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