(自薦) 書けたぞ、あの日の自分よ。
ただ過ぎ行くだけのものに思いを寄せ過ぎるのは、人の業だろうか。
人が行き交わぬ静かな春に、こんな拙作を読み返していた。
『
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888196412
〇作品概要
2030年4月。夕暮れ時、
古い歴史を持つその町の中学校で、ある日、小さな事件が起こる。
妄想暴走少年、中二病の中学二年生、
そこで、不思議な雰囲気を纏った転校生、
それからしばらく経った入学式の日。
晃陽は、夜明け前で時が止まった薄暗い無人の町に迷い込む。
高い塔がそびえる無人の“影の街”。
襲い掛かる敵“影喰い”。
そして、彼はそこで、明そっくりな“半透明の少女”と出会うのだが―――
「……面白くなってきた!」
〇自分の作品は冷静に読めない
加筆修正作業がてら読み返してみた感想だが。
―――うん。まぁ、面白かった、と思う。
祖父江はまったく自薦の才能がないのである。
普通そうで普通じゃない少し普通な少年が、ある夜、自室と繋がった薄暗闇で無人の街に迷いこむ。そこには自分の世界にはない巨大な塔が建っており、影のような化け物に襲われ、さらに神社に行くと存在感の希薄な少女が眠っており。
と、自分が妄想したそれっぽいイメージをひたすらつぎはぎして作った、とてもとても趣味嗜好のよく出た中二な作品だと思う。
中二。これは別に自虐などではない。
実際、祖父江がそれくらいの歳の頃、何度か小説を書こうと挑戦して挫折した内容が元になっている。
苦節何年か越しに、ようやく完成にこぎつけられた。
そう考えると、なかなかに万感の思い溢れる小説ともいえる。
口さがない人がよく言う。
「こんなよくある要素の切り貼りなら、自分でもできる」
愚かなことだが、かつての祖父江もそんなことを思っていたのかもしれない。
できなかった。
自分が好きなものをただ繋げただけでは作品にはならん。
当たり前の事実だが、愚者は経験でしか学べない。
しかしながら、それら経験が、このたった一本の小説に繋がっていたのだとしたら、それはそれで、喜ばしいことなのだろう。
頭の出来は、中学生の頃からあんまり進歩していない。
変わったことといえば、髭を剃るようになったことくらいだ。あとは、そうさな、失敗を積み重ねたことか。
祖父江にとって、経験とは失敗と同義であったようだ。
思い浮かぶ物語を形にできない日々が、なんとか結実した。
うむ。
大団円ではなかろうか。
あの頃の自分よ、もがいているか、足掻いているか。
書けたぞ、ようやく。
などと、作品の内容とは関係ない自分語りに終始してしまうあたり、やはり自薦には向いていない性分らしい。
ひとつ、自分で書いててお気に入ったことについて語っておこう。
こうしたジュブナイルな冒険ものは、どうしても親という存在が邪魔になりがちだ。だから、疎遠にしたり、長期出張に出かけさせたり、もっと手っ取り早く物語開始以前に死別させてしまったりするわけだが、それはしたくなかった。
夜な夜な冒険に出かける主人公・晃陽のことを、実は両親が気付いていて、それでも黙って送り出していたことが分かるという場面を作りたかった。
そのときに書いたセリフは、手前味噌だが、こうした小説の“親”を描くという部分において、なかなかうまくできたのではないかと思う。
どうだろうか。
読んでいただき、判断してもらえないだろうか。
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