一年限定夢世界
胡蝶 歩稀
第1話
拝啓先生
先生との1年は夢だと思って生きていきます。
どうか、お元気で
「2年生の理系講座の地理を担当する天宮です。1年間どうぞよろしくお願いします!」
20代後半くらいの先生だった。この学校には60を超えた先生が大半を占めるせいか、女子たちは天宮先生に釘漬けだ。
「夕日、あの先生すごい面白いんだって!去年の3年生の担任をやってたんだよ~3送会でお笑い芸人のネタパクってた人!夕日も見たでしょ??」
思い出した。ネタをやって3年生全体が笑いでいっぱいになったのだから相当生徒から人気だったのだろう。
「それで、あの先生生徒からはすごい人気なんだけど、国語の晴ちゃん先生いるじゃん。そのはるちゃんと付き合ってるらしいよ!!!!!」
「あ、私その話聞いたことあるかも。」
「そうそう、結構有名な話だよね」
友達の雨季と話していたが、そろそろ先生の自己紹介が終わりそうだったため、お互い喋るのをやめた。
2年生に進級したての最初の授業はやっぱりオリエンテーションが多い。
主にこれからの授業の進め方や、先生の自己紹介、あとたまに生徒も自己紹介させられる。正直めんどくさいが、適当にやり過ごせばすぐなので素直にやる。
そんなこんなで、今日の全ての授業と言えるかわからないが、とりあえず授業の時間は終わった。
もう掃除をやって帰るだけなので、雨季に電話をかける。
「もしもし雨季。掃除終わったー??私終わったから一緒に帰ろー」
『おけおけ、玄関で待ってて~すぐいく』
「了解ー」
電話を切り終わってから図書館に行かなきゃいけないことを思い出したが、雨季もどうせついて来てくれるだろうなどと考えていたら雨季が来た。
「ごめん、図書館行きたい!」
「おけおけ。私も本借りたいし行くよー
あ、それでね!私のクラスのね担任がまたさ~~」
雨季とはクラスが違うので雨季のクラスの話も聞いたり、私のクラスの話をしながら帰るのが私たちの日常だ。
話しながら廊下を歩いていると前から天宮先生が歩いてきた。幸い地理の授業は雨季と同じ講座なため、話が合う。
「あ!天宮先生だよ!!!!!話しかけようよ!!」
「えええ!!!!!いやいやいや、まだ今日の授業が初対面じゃんかー無理だよー」
「大丈夫大丈夫!私が話しかけるから!夕日はついてきて!」
えーーーーと思いながらも仕方なくついて行った。
「天宮先生!こんにちはーー2年の廣田です。先生私の講座の地理担当ですよね?」
「よし、廣田さんね。名前覚えたよ!よろしくね~」
「2年のC講座の一ノ瀬です。よろしくお願いします。」
「一ノ瀬さんね!よろしくね~
それで、廣田さんは自分に何か用かい??」
「先生のあの噂ってぇーホントなんですか??」
「おいっ!!!!!」
いきなり聞きすぎだ!!思わず雨季の肩を押してしまった。
「いーじゃんいーじゃん!で、ホントなんですか??」
楽しそう……
「えーなんのことさ!」
「とぼけてますね!!!!!」
「いや分からんって!」
「いやわかってますよ!!!!!」
「いやいやいやいや、分かりません分かりません!!」
ずっとこんなコントみたいな会話をしていたし、言い出しっぺの雨季は何故か恥ずかしがって言う気もないし…ここは私が………
「晴ちゃん先生の事だそうです。」
…………………
「めっちゃストレートで聞いてくるやん!!」
え、、
「え、先生、そーゆーキャラなんだ。」
言おうと思ってたのに!!!!!雨季に先越された。
「で、実際どうなんですか??」
「いやいや、グイグイ来すぎ~」
先生はすごく笑っていて、先生が生徒から人気な理由がこの短時間でわかった気がした。
面白くてからかいたくなる先生。つまりいじられキャラなのだ!!!
いじったら面白いだろうなーなんて思ってからかいたくなる。
「先生実際どうなんですか??実際!」
「そーだよ先生!もったいぶらないで教えてよ!!!」
「いやいや、秘密です。というかなんでそんな噂流れてるんだ~」
「みんな知ってますよ」
私は少ししか聞いてないけど、話をもってもいいよね。
「私は先輩から聞きましたー」
「えー誰だー廣田さん何部?」
「秘密です。当ててみてください。」
雨季と先生は部活当てクイズなんてしちゃってる。でもそれにのってくれる先生は好感度高いですなーなんて考えてると先生はもう雨季の部活を当てていた。
「じゃあ、俺一ノ瀬さんの部活も当てるね。」
「当ててみてくださいな!」
「ヒントヒント!!」
「えーーまずはノーヒントでいきましょうよー」
こうやって仲間外れにしないんだなーすげーなーって後で雨季と話した。
私たち3人は廊下での立ち話で盛り上がってた。
「あ、天宮先生!」
誰だあの先生…
雨季が横からそっと教えてくれた。彼は天宮先生と同じく社会科の先生で、1年生へ世界史と、2年生へ地理を教えている先生。ちなみに新卒の先生なので、この学校でいちばん若い。そして顔も申し分ない。転任式から2日しかたってないが、女子からの人気は計り知れない。らしい。
「2年の一ノ瀬です。」
「2年の廣田です。」
「今年から来ました、日出です。よろしくね~」
「え!じゃあ 先生は社会科研究室の中では天宮先生の後輩ってことですか!」
「そうそう、社会科研究室の中ではね~」
「俺もう 先生に舐められてるよね!これ!」
社会科研究室。略して社研は社会科の先生が集まる部屋。つまり社会の先生の職員室。社研は2つ部屋があるが天宮先生と、日出先生は同じ部屋らしい。ちなみに先生たちの部屋は3人で使っているらしい。
先生たちは歳が近いせいか、だいぶ仲がいい。そして両方面白い。
「せんせーせんせーじゃあ暇な時社研遊び行ってもいいですかー??」
「おーどんどんこい!」
天宮先生が早くに答えた。
「天宮先生お菓子ちょうだいね。」
「用意しとく!」
「じゃあ毎日行くね!!!!」
「お菓子目当てじゃーん」
放課後の廊下で4人の笑い声が響いた。
これが私たちが天宮先生、日出先生と仲良くなったきっかけ。
一年限定夢世界 胡蝶 歩稀 @hohoma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一年限定夢世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます