中学の先生

中学の先生の体験談です。


先生の高校は全寮制。

新入生は最初の夏休みの夜に近くの火葬場まで肝試しに行かなくてはならない、そんなしきたり?があった。


懐中電灯も無し、火葬場に着いたら窯の扉を開け、何でもいいから中にあるものを一つ取って来なくてはならない。

先生は幽霊が苦手なのに霊感があるから、もの凄く嫌だった。


そして肝試しの日、先生の順番になり暗い夜道を一人で歩き始めた。

近くの藪から物音がしたり、フクロウが鳴き声が聞こえて来る。

先生は怖くなって泣きながら火葬場まで走り出した。

火葬場に着くと恐怖は最高潮に。


このまま逃げようか…

でも何も取らずに帰ると怖い先輩達が…


どっちも嫌だ!


仕方なく窯の扉を開け、暗がりの中を手探りで調べると何か柔らかい物に触れた。

「ひゃあああ!」

思わず声が出た。


昔の火葬場は火力が弱くて身体の悪いところは焼け残る。

そんな話を聞いた事があるような…

もしかしたらこれがそうなのかも…

それでも何かを持ち帰らなければならない。


「うああああ!」

先生はその柔らかい物を掴むと声を上げながら走り出した。

何処をどう走ったのか分からないくらい。


暫く走ると寮の灯りが見えて玄関に飛び込んだ。

ニヤニヤ笑いながら待ち構えていた先輩達。

その姿か憎らしく見えた。


「お前は何を持って来たんだ?」

と、先輩の一人が口を開く。


あ、忘れてた…

必死になってたから手に握っていた物を忘れていた。


先生が恐る恐る手を開けて見てみると、

粘りに粘った

「納豆」が握られていた。


意地悪な先輩達、昼間から仕込んでたんだね。


先生はその場に崩れ落ちて大きな声で泣いたそうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思い出 勝尾うめ @lakma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る