第4話 通り道①

中学生まで住んでいた家は、見た目、普通の家でしたがちょっと変わっていました。


方位等に全く興味のなかった父は、そういったことを考慮せずに家を建てました。

木造一階の平屋で広くもなく、狭くもない普通の家でした。


その家は方位的にみて、鬼門に玄関があり、その正面がトイレ、裏鬼門にも大きな窓がありました。

方位をまったく気にしていなかったのに、みごとなシンクロ率で位置が当てはまります。


その家の中では不思議なことが起こりました。

スッと人影が見えて、その方向を向くと人が立っていることがよくありました。

全く見たことがない人たち。

その人たちは決まった人もいれば、初めて見る人もいます。

決まって、玄関の方から人影が動くのが見えて、そちらを向くと人が立っています。

見ている間は動かず、視線をそらすと人影がスッと動いてその人が移動した場所で立ち止まって、じっとこちらを見ています。

移動するのはトイレの方か、裏鬼門の広い窓の方です。

私がじっと見ると立ち止まってしまいます。

目線をそらすとさっと動いて、見るとたちどまる。

まるで「だるまさんが転んだ」で遊んでいるようでした。


見知らぬ人が多いときにはトイレの前に4~5人が立っていることもありました。


その人たちが見えるのは家族の中で私だけ。


「お母さん、知らないおじさんがトイレの前にいるからトイレにいけない。」

と私が言うと

「誰もいないでしょ。変なことを言わないで。」

「でもにらんでいるの。通れないよ。」

こんなやり取りをよくしていました。


「外ではあまり変なことを言わないでね。」

よく母に言われていました。

「外はお外のこと?変なことってどんなこと?」

「外はおうちの外のことよ。変なことはいない人を…いるって言うこと。」

そう言われても…そうできない理由がありました。


それは「いない人」と「いる人」が区別できないということです。


大きくなるにつれて区別できるようになるのですが、幼い頃は実際にそこに「いる人」なのか、「いない人」なのか、区別ができませんでした。


その日もトイレの前に4人いました。

モジモジして見ていると、手招きをする人がいます。

勇気を出して近づいてみると…

つまずいて転んでしまいました。

もしそこに実際「いた」ならば、床に手をつかず、ぶつかっていたはずですが、「その人たち」を通り抜けて転んでしまいました。

そうです。

そこに実際「いない人」はさわることができないということに気がついたのです。


その中でも、「我が家で頻繁に会うお姉さん」と「意地悪なおじいさん」は今でも鮮明に覚えています。


そこに「いない人」とのできごとを「通り道②」で詳しくご紹介します。

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これ本当に怖いのかな!? 上輝 歌壱 @kamikikai

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