第50話 9つの言い訳。
食事をした。
食べることが遅いことをきちんと覚えてくれていた。
私の好物も知っている。
小さい頃の話をたくさんしてくれた。
祐也くんも、嬉しそうにその話を聞いていた。
私はもっと他人行儀で、もっと距離を感じると思っていた。
それが、一気にかき消されたのは、両親の無償の愛である。
それがこれほどまでに人を変えるのかと、びっくりしながら話した。
そして、結婚の話を進めていることも話した。
写真をとりたいと、お母さんが唐突にいうので写真をとった。
携帯でとったのだけれど、おかあさんはすぐに待受画面にした。
その時、私は、その写真の自分の顔に驚いた。
私はお母さんの前ではきちんと子供の顔になっていることに気づく。
お父さんも写真を撮りたがるので、撮った。
でも、一生これで会えないのではなく、これから一生一緒でしょ?と言った私の言葉にお父さんもお母さんも、涙をにじませ、
「ありがとう」
と一言言った。
祐也くんは、結婚式に出席してほしいと、提案し、自分の両親ともあってほしいと言った。
お父さんもお母さんも、すごく申し訳なさそうにしていたけれど、
「これはぼくのお願いです。」
と強く訴えた祐也くんに、
「お願いします」
とお父さんとお母さんは頭を下げた。
互いの住所や電話番号を交換して、そう遠くないうちに、家族の再スタートがきれた。
3歳から今の今まで両親にあったことがなかったこの22年間。
わたしはそれがガマンでしかなく、両親と会うときは最低でも9つほどの言い訳を聞くんだろうなと、すごく言い訳をしてくるのだろうなと思っていたから、過去の頑張ってきた自分は認められることはないと思い込んでいたが、
両親の顔を見た瞬間、全て認められ、私はたくさんの愛に囲まれていたことがわかった。
もちろん、9つも言い訳なんてなかった。
幸せに定義はなく、不幸にも定義はない。
でも、私は今、すごく幸せだ。
掴んだ幸せの裏にはいろんな人の支えがあった。
これからの人生も、一生懸命生きていこう。
そして、親孝行しようと心に決めた。
私を産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう。
たくさん苦労したけれど、感謝でいっぱいです。
9つの言い訳 ひよらん。 @hiyoran
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