第二章

第八話『迷子になった時の対処法』

 生活品を購入し、旅を再開させたレンタ一行は次の街ホーリータウンへ向かう為に、第二のダンジョンとなるクラシス洞窟へと向かっていた。

クラシス洞窟は、洞窟内の道が網の目の様になっていて、正しいルートを進めば、出口から出られる様になっている。

出てくる魔物の討伐レベルは5〜8Lvが多く、レベル7〜8のモンスターは初級魔法を使用してくる、新米冒険者から見て少し厄介なモンスターだと言える。

クラシス洞窟は時折小さい宝石が発掘される事があり、それらは鍛冶職人達へと流通されています。

レンタ達は生活品を革鞄に詰め、武器を装着すると宿を後にした。

西の門からアラブリスタを出て、前に真っ直ぐ歩く。

歩いていると少し小高い丘に出てみると、多少大きな森とその奥に君臨する多少大きな山が確認出来る。

「ここから真っ直ぐ行って森に入り、正しいルートで進めば洞窟の入口が見えてくる筈だ。」

「ね、ねぇ、レンタ…。」

レンタがそう言うと、フランダリが弱々しい声で話しかけてきた。

「森に入るという事は虫と戦う事も有るのよね。」

「…まぁ、有るだろうな。でも道は短いし…迷ったりしなければ大丈夫だぞ。」

大丈夫だ、と言っても未だフランダリの不安は消えない様で、今度はラヴィに聞く。

「山に入るという事は蝙蝠と鉢合わせる事も有るのよね。」

「…まぁ、有るでしょうね。ですがそれ程大きいという訳でも無いですし…迷ったりしなければ大丈夫ですよ。」

すると今度はフランダリは頭を抱えてこう言い返した。

「なんなの、その迷ったりと言い始める前の数秒の沈黙は。怖いという訳では無いけど、不安になる言い方よね。怖いという訳では無いけど。」

怖いのか。

「なんだよフランダリお前、攻撃力と耐久力には自信が有るけど、メンタルには自信が無いってのか。騎士として駄目じゃない?」

「この感情は、騎士としてじゃ無くて一人の女として駄目なの。」

がるるると唸り声を上げながら、反論してくる。

「仲間なら、もっとこうさ…『大丈夫だぁ』とかって確信を持った言い方してくれないと不安になっちゃうじゃない。乙女の気持ち的に。」

ラヴィが「あらあら」と可愛らしい物を見た時の御母さん的仕草で、フランダリの言葉を聞いていたが、レンタは少し面倒臭そうな顔をして言った。

「…乙女?ゴリラ女も怖い物が有るんだな。」

「はぁ?私バナナよりも蜜柑が好きだから、ゴリラじゃ無いんですけど。」

「今突っ込むとこそこじゃ無いだろ。…ラヴィさん、こいつは放っといて、とっとと行きましょう。」

「え?ええ…。」

ラヴィは戸惑いながらも付いてきたが、フランダリは後から焦りながら追いかけてきた。

ーー刻影の森ーー

案の定迷った。

「ほらね。私の言った通り迷ったでしょ。だから不安だって言ったのに。」

フランダリは地面の上に座りながら、ブツブツ文句を言っていた。

レンタはその様子を冷ややかな目で見ながら、こう言った。

「なにがお前の言った通りだ。お前が『多分こっちに洞窟の出口がある気がする!』って飛んでいったから付いていったら迷ったんじゃないか。馬鹿か?」

「ば、馬鹿じゃないわよ。私の頭にピロリーンと神のお告げがあったのよ。」

「じゃ、その神様が馬鹿なんだな。」

これはフランダリも反論出来ない様で、またブツブツ文句を言い始める。

レンタはラヴィに、これからの行動を相談する。

「そうですね…これは洞窟まで使いたく無かったんですけど、仕方有りません。」

ラヴィは一つ溜息を付いて、手の平を上にした状態で左手を前に出す。

すると、手の平の上に魔法陣が現れ、その中から赤く発光する小狐が現れた。

「契約魔獣…か?」

「ええ、小さい頃に父が私の為に取ってきてくれたスネイという火属性魔法を操る狐モンスターです。人を暗闇の中で導く効果があるとも言われていて、火の光によって出入り口を見つけてくれるのですよ。…スネイ、洞窟の入り口へ連れて行って。」

ラヴィがそう言うと、スネイは小さく頷いて、森の中をどんどん進んでいった。

暗闇の中なのでスネイの火の光がよく見える。

「ではラヴィさん、愚図愚図言うこいつは放って行きましょう。」

「え?ええ…。」

ラヴィは又もや戸惑いながら付いてきたが、フランダリも暗闇に取り残されるのは嫌だったのか涙目になりながら後を追いかけてきた。






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勇者を倒したい勇者 狛犬 @125177

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