てっきりテンポの良いギャグが持ち味のコントのような作風の作家かとばかり思って油断していたところ、結構ガチで怖いホラーを叩きつけられてビビってしまった。特に怪異を退治する爽快感はありつつもそれで語り部が幸せになれるかは別問題という怪談らしい後味が良い。「おばけ」は不条理と呼ぶには筋が通っていて、けれど正体を推理するには理不尽がすぎる。システマチックだがそれは人間社会のシステムとは異なる。そういう感じの怖さだった。この作家思ったよりバカっぽくない文も書けるんだな……
平凡な日々を過ごしていたはずの主人公を突如非日常に引きずり込む"おばけ"。それは顔(いばしょ)や首(いのち)、大切なものを奪っていく。2人の女子高生、八雲とハーンは「金属バット」の暴力と「名前を付ける」能力で、今日もお昼に"おばけ"を退治する。ハイテンションとエモーショナルの緩急を自在に操る筆者が全編シリアスに徹して贈る、端正なホラー作品。