第3話 ナツミちゃんとゲームとかき氷

 そよぐ海風がとても心地良い。

 南国の島に旅行に来てまで、僕はゲームをしている。しかも会ったばかりの女の子ナツミちゃんと――


 ✻


 お母さんは旅行の特典のリラクゼーションサロンにさっそく出掛けた。

 僕は一人でビーチを散歩しようと思って外に出た。

 コテージの入り口のベンチにまだ、さっきのツインテールの女の子は座っていて、僕は旅先の気安さからかつい話しかけてしまった。

 だって彼女のやっているゲームの音は僕のお気に入りのゲームと一緒だったからだ。

 彼女はにっこり笑ってお喋りしだした。


 初対面なのに僕達はすっと気が合ったのを感じた。コーヒーに溶け込むミルクみたいに違和感がない。

 会話が弾む。僕はどちらかと言うと人見知りなのに、ナツミちゃんとは昔馴染みみたいに不思議と和んだ。


 今夜泊まるコテージからすぐのビーチ。穏やかに寄せる波の音がする。

 海の透明度は素晴らしい。

 真っ白な砂浜にカフェがあってオープンテラスにはあまり人がいなかった。

 僕はナツミちゃんと30分ぐらいゲームをしてから、ドラゴンフルーツやマンゴーののっかったかき氷を二人で分け合って食べた。


「シュン君は関東の人?」

「うん、東京。ナツミちゃんは?」


 ナツミちゃんの顔が曇った。泣きそうな顔をしている。

「どうしたの?」

「私は神奈川に住んでたの。でもね、この島に引っ越すことになって……。あのホテルはおばあちゃんが経営してるんだ。おばあちゃん病気になっちゃって、お父さんが手伝う事になったんだよ」

 ナツミちゃんは地元を急に離れることになって悲しんでいた。友達と離れる寂しさ。通い始めたばかりでも受験を受かって嬉しかった高校から転校する不安。

 僕はナツミちゃんが可哀相になって慰める言葉が見つからずにいた。


 すると重苦しい空気を吹き飛ばす様に彼女はニッコリ笑った。


「ねっ、島探検しよう! 私と冒険しない?」


 向かい側に座っているナツミちゃんは椅子から勢いよく立ち上がり僕の右手を両手で握りしめる。僕の胸の鼓動はドキドキと早くなって顔が熱く火照った。


「うっうん。お母さんに出掛けるって言って来るよ」

「私もお父さんに言って来るね。シュン君。じゃ後でロビーに来て」


 彼女の白いふわふわのフリル袖から伸びる細い腕と、リボンの付いたデニム生地のミニスカートからのぞく素足に一瞬ドキリとした。

 僕の瞳に映るナツミちゃんは輝いている。


 彼女のよく日に灼けた小麦色の肌が僕には眩しかった。





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