第20話 ツムギ
「ここはどこだ・・・?」
見上げる空は辺り一面真っ暗だ、しかし地面は白く光っているために遠くまで見渡せる
何もない世界を注意深く見渡すと、遠くの方で誰かが体育座りをしている
こちらに気づいていないのか振り向こうともしない
シロはその人物の元に歩く、近づくにつれ何となく恰好から女性だと認識できた
女性は体育座りのまま顔を地面に向けたままだ
シロが話しかけようとすると女性の方から声をかけてきた
「君はよくここに来れたね?」
女性が顔をあげたときにようやく誰かを認識することができた
「ここは一体どこなんだ?」
「いきなり確信を聞いてくるとはなんともせっかちな人だ、僕も初めてこの場所に来て興味が沸いたからしばらく探索していたのだけど、どこへ行っても同じ世界、ここに印を付けて真っ直ぐ歩いたら同じ場所に戻ってきた、足元は小さな球体だってことはわかった」
「変わった所だな」
「なぜ空が暗いのに地面が光っているのか、どこかに光る物があって反射しているわけでもない、しかしここに居るとなんだか妙に落ち着いてね、普通の人なら気が狂いそうな場所かもしれないのに不思議だよ」
「たしかにな、不思議と気分は悪くはないな」
「もしかしたら永遠にこの場所に居ることになるのかも・・・と考えていた時に、君という存在が現れた、君はすごいよ」
「なんでここに居るのか、さっぱりわからねぇけどな」
「いずれ時が来れば理解できるようになるさ、なにせ君は左目からの呪縛を破壊してくれたのだからね」
「俺がそんなことをしたのか?」
「ふふふ、君がなにも気づいていないところがおかしいんだけど、これを生み出した者は驚いているだろうね、まさかただの人間にこういう事ができたんだから」
「そういうお前も人間じゃないか?」
「うん、一応僕も君と同じ人間だよ、でも、それもいずれ分かるさ」
「小説家の先生は言ってることの理解に苦しむな、まったく」
「僕の妄想も激しいからね、でも、君はいろいろと面白い存在だね、興味が沸いてきたよ、ただ僕と同じように左目を生み出した者もそろそろ君に気づくかもしれないから注意してほしい」
「注意しろと言われてもな」
「君は左目の封印を破壊できる唯一の存在、ある意味救世主でもあるが、彼らにとっては邪魔な存在でもある」
「そんなにやばい奴らなのか?」
「今はまだ大丈夫だけど、君と言う存在を守るためにも、僕はこれからいろいろと動かないといけないからね、ゆっくりしたいけど、そろそろ戻ることにするよ」
「お、おい、まだいろいろと聞きたいことが在るのに・・・・」
「向こうですぐに会えるさ・・・」
女性はシロを微笑みながら消えていった
シロが気が付くと病院のベッドで女性の手を握り占めていた
「僕の大事な手をそんなに強く握りしめて、小説が書けなくなったらどうしてくれるんだい?」
「あ、ああ、す、すまない、気を失っていたようだ」
「謝らなくてもよい、おかげで僕は自由になることができたし、逆に感謝したいところだが、今回はご褒美ということで特別に許してあげよう」
「ツムギだ、よろしく、シロ」
「あ、ああ、よろしくな、それにしてもなんで俺の名前を知ってるんだ?」
「ボクはなんでも知ってるよ、そこに居るのはレトリー、そして、ここにはいないけど、ひまり、セワス、アクア、君たちの仲間だろ、そしてゼロとメッシュ、アンズも居たっけ?」
「どういう事だ?」
「夢のお告げ・・・とでも言っておこうかな」
「それがお前の能力なのか?」
「詳しくは言えないけど、そういうことにしておいて欲しい」
「それ以上言いたくないなら詮索はしないが、お前も命が狙われているようだし保護したい」
「そうか、まあ、そうだね、どうせ続きを書こうと思っていたし引き籠るのも悪くないか・・・」
「あなたの事は全力でお守り致します」
「こちらの御仁は?」
「申し遅れましたラセルと申します」
「ちなみにラセルはこの国一の剣士だ、だから安心しな」
「ほほう、これはなかなか創作意欲が駆り立てられそうな人物だな」
「ちなみにツムギの作品のファンらしいぞ」
「そ、そうか私のファンなのか・・・あは、あは、あはははは・・・」
「な、なんかよからぬ想像をしてないか・・・?」
「じゅるり、あ、いや何でもない、気にしないで欲しい、それよりレトリー、いやリトリーだったか、シロをよろしく頼みます、彼は私たちの希望となる人物です」
「はい、わかりました、なんとしてもお守り致します」
「ただ今の状況だと少し心細いので少し力を貸そうではないか、役に立てると思うぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「そんな事ができるのか?」
「ああ、シロが僕を自由にしてくれたおかげで出来そうだ」
「よくわからねぇけど、すごいな」
「ただ、ここは居心地が悪いので、ラセル殿の屋敷に付いてからにして欲しい」
「わかった、無事目を覚ましたことだし戻るとしようか」
《時の呪縛からの解放、自覚が無いとはいえシロはどの程度理解しているのだろうか・・・、少し様子を見届ける必要があるな・・・》
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