第18話 都市ラプル
俺たちはスナメの荷馬車に乗りラプンツェル領第一の都市ラプルを目指して進んでいた
ひまりの絵は一般のお店で販売すれば売れるだろう、ただ大衆向きとなれば描く方も大変、これだけレベルの高い絵となれば高貴なお方の邸宅に飾ってもらい宣伝するのが一番だろうとスナメ曰く、それにシロも同意できた
そこで思いついたのがレイルだ、ラプンツェル領の領主の屋敷に飾って貰う
これほど効果的な事はないだろう、もしかすれば皇帝の目にも触れる機会があるかもしれない、そうなればひまりの絵の価値は想像を超える域となるに違いない
オウロを村に預け、荷馬車に乗り村を出る
ラプルまでの工程は約1日
さすがラプンツェル領と言えよう、途中、巡回の兵に出くわすほど街道は安全だ
ただし、荷馬車の乗り心地は最悪だ、セワスだけは平気な顔をしているが、あとの3人はダウン気味だ
出発して1日が経ちようやくラプルが見えてきた
「すっげーなー、こいつは、街というより城塞都市だな」
シロが思うのも無理はない、ラプルは帝国一の精鋭部隊でもあり、剣を習いに帝国中からも人が集まってくる
門には門番は居るが通行許可書があれば問題なく通れるレベルだ
門を抜けると石畳が広がり、兵舎と思われる場所も存在している
広場ではたくさんの兵たちが集まり訓練を行っている
「この都市では塀の内側は兵舎があり常に兵たちが訓練していますよ」
「へぇ、そうなんだ、すごいな」
「アクアさんの様な人はここの兵士さん達に人気がでそうですね」
「ふふふ、やっと私の出番がやってきたかにゃ」
「庶民的なアイドルか、なかなかいいじゃないかアクア」
「シロ君、雑用係として雇ってあげてもよろしいにゃよ、ざ・つ・よ・う・として」
「お前な、雑用係を甘く見るなよ」
「シロ様の云う通りでございます、雑用と言うのはすべてにおいて相手の心を先読みしいろいろな事に精通する、またはそれ相応の人脈も必要となります、なかなかどうして、要求される能力はそれなりに高くないと務まらない仕事なのです」
「ほらみろ、セワスが言うのなら説得力があろう」
「ふんだ」
「シロさんここからが商業地区になります」
《ようこそラプルへ》
「おお、一応商店街みたいな看板があるんだな」
「くんくん、くんくん、うわー、なんだかいい匂いもしていますね」
「時間はたっぷりありますし、予算もありますので、あとで買い食いでもなんでもしてください」
「わーい、ひまり見て、あれなんか美味しそうだね」
「うん、無邪気なリトリーさまもかわいい・・・」
大通りを荷馬車で進むとなにやら人だかりに出くわす
「おっとっと、シロさん、前方になんか人だかりができてますね」
「ん、中心にだれか居るのか?早速アクアのライバル登場か?」
「にゃんだと、それは興味あるニャよ」
荷馬車からのぞき込むアクア達
周囲の人混みの中、声の感じとして15,6歳と云ったところか、青い羽織を着、この世界には似つかない剣士の様な恰好をした、髪の短い小柄な少女が立ち演説している、少女の左目は少し金色がかっている
「お集りの皆の衆!!!我と共にこの世界を破滅と混沌に導く魔王を討ち果たそうではないか!」
「腕に自信のあるものは我の元に集うがよい」
「我が左目が・・・ゼロ刻む時に・・・我の真の力が解放される!そして、我はこの世界の勇者として覚醒するであろう、さあ、皆の者!我と共に英雄譚を刻もうではないか」
集まっている人たちがザワついている
「魔王?ってなんだ?」
「そういえば最近兵士間で流行っている本にそんなこと書いてあったようなきがするな・・・」
「なんだ、なんだ、本の影響を受けた娘か?」
「気の毒にな、この世界に魔王なんて者は存在しないのに・・・」
「見た目がかわいいだけにちょっと残念だな・・・」
「なんだ?周りのあの少女を見る視線が・・・痛々しくて見てられない・・・」
「正統派アイドルを前にしてなかなか目立ったことをしてくれるじゃニャいか!」
荷馬車から飛び降り群衆の中央へ向かうアクア
「お、おい、アクア!」
「どこの誰だか知らニャいが、この都市一の猫耳美少女アイドル!、アクア様を差し置いて先に目立とうなど、言語道断!」
「猫耳美少女?獣人か?なるほどパーティメンバーに獣人と言うのも有りだな、しかも見た目もなかなか良いではないか」
「ちょっとそこに人?話聞いてます?」
「ああ、もちろんだとも、アクア殿、よかろう猫族の獣人よ、我がパーティにようこそ!」
「おお、また美少女が増えたぞ」
「猫耳か・・・なかなかかわいいではないか・・・」
「お、おいそれよりあっちの荷馬車を見ろよ」
「おお!!、これはまた2人より群を抜いてかわいいではないか」
群衆の視線を奪っていくリトリー
「シロさん、これはまずいですね」
「ああ、ここはアクアを置いて逃げた方がよさそうだな」
「アクア!レイルさんの屋敷で待ってるから後で来いよ!」
「お、おーい!薄情シロ!、ぬぬぬ、覚えていろよ!」
「アクアとやら、彼女たちも君の仲間かね?」
「あの薄情者の男以外は仲間だニャ」
「そうか、じゃあ彼らも一緒にパーティに迎えなければ失礼に値するな、さあアクア殿の待ち合わせ場所まで行こうじゃないか」
「そういや、あんたの名前聞いてなかったニャ」
「、そういえばまだ名乗ってなかったな、我が名はメッシュ!この世界の勇者であり英雄であり、伝説を作る存在!」
「今はまだ、ただの剣士・・・なのかニャ?」
「ああ、そうだアクア殿!、伝説と言うのは一歩一歩着実に歴史に刻まないといけない、地道な苦労があるからこそ、英雄譚が映えるのだよ!」
「にゃるほど、ところで前から来る人物は仲間かなにかニャ?」
懐に光る物をチラつかせながらフードを被った如何にも怪しげな人物がこちらに向かってくる
「殺意の意思表示か、どうやら私の命を狙っているようだな、アクア殿、私の後ろに下がるんだ」
「・・・厄災の目・・・排除せねば・・・」
「貴様、人の身でありながら、なぜに魔王に魂を売るのだ、返答次第では切る!」
「・・・・」
「返事は無いか・・・洗脳されているようだな?」
「洗脳?ふむふむ、たしかに洗脳と言えば洗脳かもしれないけど、強い意思も感じられるニャよ?」
「アクア殿は相手がどんな魔法に掛かっているのか判別ができるのか?」
「ふっふっふ、アクアちゃんはアイドルとして子猫ちゃんたちのハートをギュッと掴むのが得意にゃのだ、それくらい見分けられて当然にゃのだ」
「なかなかやるではないか、私の目に狂いは無かったようだ」
メッシュは剣を強く握りしめる
「いくぞ!暗殺者! ティッ!!! ヤァ!!!!!」
「ありゃりゃ、メッシュは思っていた以上に・・・弱いにゃよ・・・」
「くそぉ!! なかなかやるではないか流石、暗殺者、わが命が窮地に立たされたときにきっと左目は開眼されるはず、今はまだ時ではないのか・・・?」
暗殺者の体重の乗った剣激がメッシュの小柄な体ごとアクアの足元まで吹き飛ばした
「はぁ、もう見てられないニャよ、しょうがないニャ・・・」
アクアは意味は無いが猫耳を取り外した
「そこの人間!アイドルに剣を向けるとは良い度胸してるわね、ひざまずきなさい!」
男はアクアの声に抵抗が出来ず、ひざまずく
「おお!、猫耳を外した・・・これはもしかして、観客の前ではアイドルとして演技しているが、楽屋に戻ると巣の状態に戻るというやつか」
男の前に不敵な笑みを浮かべ立つアクアの表情は暗殺者を恐怖に駆り立てた
「あなた、誰に頼まれたのか言いなさい?、正直に言わないとこの猫爪でミンチになるわよ」
「ひ、ひぃ~、どうかお命だけはお助けください、お、おう・・・」
どこからともなく投げられたナイフが男の心臓を貫く
「アクア殿私の影に」
メッシュはアクアを庇うように前にでる
「その心意気はありがたいが、どちらかと言うと狙われる可能性が高いのはメッシュの方じゃ無いのかにゃ」
アクアはメッシュの肩を掴み後ろへやろうとするがお互いに譲ろうとはしない
「いいや、メンバーを守るのはリーダーとして当然!」
「いやいや、どう見てもメッシュの方は弱いし」
「うぬぬぬ、強情な猫娘め」
「そっちこそなかなか頑固だニャ」
二人が言い争っている間に騒ぎを聞きつけた憲兵がやってきた
「お二人とも少し聞きたいことがある、詰所まで来てもらおうか?」
メッシュとアクアはこの街の憲兵に連れていかれた
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