第13話 我が名はア・・・、ただのスケルトン

ゼロに対して行った事がシロの左目に影響を及ぼしていた

シロにしか見えないレーザーの様な光の線がある方向を示していた光の脇には数字が表示されている


「これは、どう考えてもそこに行けという意味だよな、しかも時間まで表示されている・・・7日か・・・」


光の示す先になにがあるのか確認するために村長に地図を見せもらいにいく


「この方角じゃとラプンツェル領を超えて、スナリエ領に入ります、ここから我々の足できっちり7日の距離となると王国第3の都市フエキになりますな」

「王国領か・・・できれば今は避けたいところだが・・・」

「ところで村長、ここの場所にはなにがあるんだ?」


シロは地図上の洞窟らしき印がなぜか気になった

この世界ではあまり考えられないキーワード"引き籠り"

現代人ならこういう場所を好む可能性が高そうだからだ


「ここには雨露をしのげる洞窟がございます、ただここ最近は蝙蝠が沢山住み着いておるようで誰も近寄る者はいないと聞いております」


人が近寄りがたい場所ねぇ・・・尚更やっぱすげぇ気になる


「ここへはどのくらいで行けそうだ?」

「シロ様が生み出してくれた乗り物でしたら半日もかからないかと」

「半日か、とりあえず下見も兼ねて行ってみるか」

「それでしたら松明などご準備させていただきます」

「ありがてぇ、助かるよ」


村長の家を出て、誰を連れていくかで悩んでいるシロ


リトリー ⇒ 村に置いていくとなにかのフラグが立ちそうなので同行確定

セワス ⇒ 万能なのだが、うーん、やっぱダメだ、今回の俺の計画には不向きだ

アクア ⇒ 五月蠅いだけだしな・・・

ひまり ⇒ 乗り物を使うなら一番最適だろうし、もしも死ねばゾンビ化の危険性は・・・今回は低いだろうと考える


「よし、リトリーとひまりを連れていくとするか」


「ひまり、オウロに3人乗れるのか?」

「うん、大丈夫だよ」


オウロの背中に乗るシロ


「ひまりは前がいい」


オウロに乗るひまりは慣れたものだ

だがリトリーの方はそうもいかない、騎乗から手を差し伸べるシロ

リトリーの柔らかな手の感触にシロは少し照れてしまう

やっぱリトリーってかわいいよな・・・


「リトリーのうさぎ耳って取り外しできるのか?」

「あ、これ?できるよ」

「へぇ、どういう仕組みなってるんだ?」

「私にもよくわからないけど、シロの話声とかは普通に耳から聞こえてくるんだけど、耳から聞こえないような音はうさぎの耳を通じて直接頭に入ってくるの」

「ふむ、骨伝導のような物なのだろうか?」

「こんど説明書が無いか探してみるね」

「ああ、気が向いた時でいいからな」

「うん」

「じゃあリトリーは俺の後ろでしがみついてくれるか?」

「こ、こうでいいの?」


おお、この背中から伝わるこの柔らかな感触、胸は特に大きいって訳でもなく、普通の部類に入るかもしれないが、密着感たまらねー

俺の計画大成功!


「へ、変な事考えないでね、ただでさえ恥ずかしいんだから」

シロが鼻の下を伸ばした顔をしていると、シロの前に座るひまりが振り向いた

「そんな顔しちゃだめ」

ひまりはシロの顔に痺れ薬を塗りつけた

「お、おれの究極の楽しみがぁ・・・・」

「いくよオウロ」

「ワオーン」

痺れ薬のせいで全身マヒが治らないまま時が過ぎ

洞窟に到着する頃には痺れもマシになってきていた


「ひまりんの薬、恐るべし」


村長が用意してくれた松明を付け中へ入っていく

「ひまり、暗いところきらいなので入口で待ってる」

「そうだな、とりあえず俺が中の様子を見てくるわ」

「シロ、気を付けてね」


奥へと歩いていくシロ

外からは暗くて見えなかったが洞窟の奥には人が居た形跡が残っている


「なんだこのフィギアの数は・・・この辺りの土で作ったのか、飾り方にもこだわっているな、こいつは引き籠り10年生なんてものじゃない こいつは20年生以上の気配が・・・」


フィギアを観察しているシロ、その中で気になる1体を見つける

「この特徴的なうさぎの耳のついたフィギア、なんだかレトリーに似ているな・・・」


「きゃー、いやー、下ろしてー」


と、突然入口から声が聞こえてきた

「この声はひまりか」


石だらけの洞窟内、手ごろな武器も無く、とりあえず地面に落ちている石を拾い、急いで入口に戻る


「ひまりを下ろしなさい、ケダモノめ!」


リトリーは人差し指を突き出し男に向かって命令している

そこには50代くらいの薄毛で長髪な小太りおっさんがひまりの脇に手を入れ持ち上げていた


ケダモノか・・・たしかに、そうかもしれないがリトリーさん一応は人間扱いしてあげてねとシロは心に思う


「ぐへへへ、動くひまりたんがなぜこんなところに・・・、おお、隣はリトリーしゃん、うへへへへ」


んー、たしかに魔物並みにキモイし、その呼び名はなんだかひまりとリトリーを汚された気分もする、だが俺も将来はああなる可能性が否定できないと考えればどんなやつでもやさしくなれるはず


「おい、おっさん!ひまりんを離せ!・・・ってもう遅い?」


ひまりが男に対してすでに薬を投げつけていた

男はひまりを手放し、薬の掛かった顔を手で抑えながら苦しみだす


「人に使うなって約束だったけど、なんか、人間扱いされてない感じでちょっと可哀そうだな・・・」


苦しさで男が髪を掴むと肉ごと抜け落ち、顔を引っ搔くと顔の肉も削げ落ちていく

内臓の重さに耐えきれなくなった腹の皮ははち切れ、臓物をまき散らす

その光景にリトリーは思わず目を塞いでいた


リトリーの視界を防ぐようにシロは前にでる

「うううぅ、私、グロはちょっと苦手かな・・・」

「大丈夫かリトリー、それにしても、なんというホラーな展開・・・しかし、これは・・・」


男に纏わり付いたすべての肉が地面に溶け落ち、男はスリムになっていた


「こ、これはスケルトン・・・なのか・・・リアルで見ると意外とかっこいいな・・・」


「あああ!!!!」

男が急に叫び出した

「な、なんだ?」


「お、俺の大事なチ〇コがー」

膝を地面に付き、絶望の姿で頭を手で抱え込んでいる


「男としてその部分は同情したいな・・・」


しかし、落ち込んでいたと思ったスケルトンはすぐさま高笑いをする

「ふ、ふはははははぁぁぁぁ」

「な、なんだまた笑い出したぞ」

「まぁいい、これでDTを気にすることもなくなり、実に晴れやかだ、こんなに気分が良いのは何十年ぶりだろうか、お前達には感謝する」

「急に開き直りやがったな、ところで、お前って、やっぱその左目は、向こうのから来たんだよな」

「よくぞ聞いてくれた、我が名はアインズウル・・・・」


そう言いかけた処で手に持つ石を投げつけた、頭に当たると洞窟内にゴーンと鐘のように響き渡った


「結構いい音するな」

「す、すまない、この姿になれば一度はやって見たい衝動に駆られれて、つい口走ってしまった」

「わからんでもないが、おっさん、なんかノリがいいな」

「おっさん?おっさんだと?我が名はアインズ・・・」

「いや、それはもういいから・・・」

「うむ、では、そうだな、アウンズ、いやアエンズ、アオンズ・・・・んー、どれもしっくりこないな・・・・、よしアンズと名乗ろう」

「急に可愛くなったじゃないか!」

「すまない、正直名前など、どうでもよいのだが、ところで、私の秘所に訪れたお前たちは一体何者なのだ?」

「俺の名はシロ、こっちはリトリー、んで、ひまりだ、俺もお前と同じで向こうから来た人間だ」

「なるほど、至高の存在・・・と言うわけだな」

「うまいこと言うな・・・」

「よかろう、なら、わが友の為にここに地下大墳墓を作ろうではないか」

「絡みにくい性格だな・・・」


「ところで、シロ、聞きたいのだが、ここには人間の国と言うのは存在しているのかね」

「ああ、帝国と王国がある、王国は俺らを厄災だとかなんとかで毛嫌いしているけどな」

「お、王国・・・俺を追い回した奴らか・・・・ならば、帝国には飴を、王国には鞭を与えようではないか」

「やっぱそういう展開になるよな」

「ではまず友好の証としてお前達と連絡を取るための使者を遣わそう」

天井の蝙蝠を見つめ、アンズは手をかざす

「desu!」

アンズが叫ぶと蝙蝠が地面に落ちた

「おおー、今のは魔法かなにか?」


「ふははははは、この蝙蝠の死体を使ってアンデットを生成しよう、クリエイトアンデット」

「・・・」

「クリエイトアンデット」

「・・・」

「あれ?おかしいな、クリエイトアンデット、クリエイトアンデット」

地面に落ちた蝙蝠は起き上がり飛んでいった


ひまりがシロに駆け寄り耳打ちをする

「・・・そうか・・・アンズよ、残念だが、お前はただのスケルトンだ・・・、それに・・・たぶんデスも違ってるような気がする」

「魔法も使えない、ただのスケルトン・・・そうか、それは残念ではあるが・・・、まぁ、不死の体を手に入れただけでも良しとしようか、これから時間はまだまだある、今から俺の物語が始まると云うことだな」

「そういう前向きな考え嫌いじゃないぞ、アンズ」

「ありがとう、シロ」

「がんばれ、アンズ」

「ありがとう、リトリー殿」

「あ、あのごめんなさい」

「あやまらなくてよいぞ、ひまり殿には逆に感謝しているくらいだ」

ひまりは微笑みの中に少し邪悪さを匂わせた笑みを浮かべる


「さて私はここに地下大墳墓でも作るために籠るとしようか」

「やっぱ、不死になってもここに籠るのかよ」

「飲食不要とはいえ、この姿で外をうろつくわけにもいかんのでな」

「たしかにそれは一理ある」


よくわからないがこれでよかったのだろうか・・・

シロの左目の光はやはりこの場所を示したままだが、時は消えている

シロが悩んでいるとリトリーがシロの服を引っ張る


「シロ?」

「ん、どうしたリトリー?」

リトリーの耳が反応している

「人の気配、誰かが近づいてくる」

「そりゃまずいな」


「ん、生者の気配、5人か・・・、3人とも、少し下がっていろ、どうやら招かれざる客人が来たようだ」

どうやらアンズもその気配に気が付いたようだ

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