第12話 ゼロの進む道

レイルの剣の腕前は相当高い位置にあるのが打ち合いをしてみて分かる

スピード感に加え、多彩な攻撃からここぞという場面での一撃の重さ

流石はラプンツェル家は帝国一の剣士の家系、一般の兵士10人程度はひれ伏す強さは軽くあるだろうとゼロは推測する


しかし・・・

捉えたと思った瞬間、レイルの剣は残像でも切ったように虚しく空を切る

それと同時に、レイルの剣は弾かれ背中の心臓の位置に剣を突き付けられる

一瞬なにが起こったのか分からない位にゼロの動きは早い


「ま、参った、お主のその剣技、この世界では見かけないな」

「いいやレイルさん、あなたの剣もそうとうレベルが高いとお見受けしました」

まさか剣の技の元がゲームやアニメなんて言えないしな・・・

弾いた剣をレイルに渡す


「つくづく完敗だね、ゼロのような剣士がなぜあんな王国の兵士に追われていたのか不思議に思えるよ」

「すいません、記憶を・・・剣に対する記憶をすべて失っていました」

「なるほどな・・・」

「はい、でもそれを彼が、シロがすべて思い出させてくれたんです」

「そうであったか、なら彼に対する恩は多大だな」

「そうですね、彼には返しきれないほどの借りが出来たようです」


すごいなまさかここまでとは思ってもいなかった、この能力はこの世界ではチート級だな、シロ、君は僕になんてものを与えてくれたんだよ、感謝する・・・


ゼロの能力は剣技だけでなく、襲ってくる者の時間を徐々に停止していくものであった、切りかかった者にすればまるで残像でも切ったかのような感覚になるが実際にはありえない速度で躱されたということである、この世界の人間のもつ1秒と言う時をゼロは瞬間的にその10倍まで伸ばすことができていた、その時だけ左目のカウントが始まる


こんなすごい能力を与えて貰ったらもう元の世界に未練はないな・・・


元の世界で過ごした今までの人生がつまらなく、そして虚しく思えるほどの高揚感だ


「すごい試合だったな、レイルさんの剣技は無駄のない美しい動き、流石だな」

「いやいや、ゼロ殿に比べると、自分の剣の道はまだまだ長いと実感させられたよ」

「ゼロの剣も初めて見たがなかなかすごいな、一体なにを参考にしたんだ」

「アニメなら黒の剣士、はたまた海賊狩りのゼロ!、ゲームでいう所の最強の忍が使う残像剣!その辺りをいろいろとね」

「なんか一文字違うような気もするが・・・、そもそもお前、2刀ですらないし」

「僕の真価は2刀以上で発揮される・・・」

「おお、ゼロ殿は2刀使いであったか、1刀ですら及ばない身、これは完全に完敗だな、どうだ君さえよければ当家の客人として屋敷にお招きしたいのだが、返事は急がない気が向いたらいつでも訪ねて欲しい」

「うーん、ちょっとだけその返事待ってくれないか、ほんの少しだけ時間が欲しい」

「構わんぞ」


「シロ、一つだけ聞いていいか?後ろの子が非常に気になるのだが・・・」

「ひまりか?ひまりはゼロ、お前の傷を治した言わば薬師のようなものだと思うのだが・・・」

「なるほど、君は知ってか知らずか、だな・・・悪夢の120万の課金・・・」

「120万の課金・・・そういえばなんかそういう鬱になりそうなガチャ動画見たことがあるような」

「そう、その動画をアップしたのは僕だ」

「えええ・・・そうなのかよ」

「そう、あれは究極のシスコンゲーム"シスラブ生活"、そのゲームの中でエンディングにまで影響のある最強にして超低確率の出現率のレアキャラ、そもそもそんなキャラいないんじゃないの?と言われ、それに120万掛けたけど・・・出なかったよ」

「ゲームの内容は分からないけど、そんなにレアだったのか」

「ああ、ひまりに愛された主人公は、お兄ちゃんは誰にも渡さないと主人公を殺しゾンビにしてしまうエンドを楽しむことができるという究極の美しき愛」

「そういう話だったのか・・・」

「120万円かけても出なかったひまりが、同じ世界にいて動いているじゃないか・・・なんという出会い・・・」

「ひまりさん」

「は、はい・・・」

「僕が死んだらゾンビにして欲しい」

「ご、ご、ごめんなさい!人には使っちゃダメってシロと約束してるから・・・」

「なるほどね、なかなかよい予防線を張っているじゃないか、やるねシロ」

「たまたま・・・だけどな」

ひまりがそんなやばいキャラだとは知らなかったぞ・・・


「これで決心がついたよ、レイルさん僕をラプンツェル家で働かせて欲しいのだが問題ないだろうか?」

「んー、そのくらいなら私の独断でもできるが、正式にとなると一応はお兄様にお目通しはしておきたいな・・・」

「シロ達への恩返しとしてが帝国の中で動きやすいように彼らの力になりたい」

「そういう事情ならいいだろう、とりあえず一緒に屋敷に来ると良い」

「そういう事で先に街に行くよシロ」

「ああ、気を付けてな」

「リトリーさま、ひまりさま、またお会いできることを楽しみにしております」

「はい、ゼロさまもお元気で」

ひまりはリトリーの後ろで隠れている


村を離れていくゼロとレイル

「ところで帝国の皇帝というのは怖い人なんだろうね」

「そんなことも知らないのか、笑われるぞ」

「どうして?」

「この国の皇帝は女性だ、しかもまだ14歳でな、少々問題も起きている」

「なるほど、この展開は僕の萌えに火が付きそうだね」

「なんだ熱いのか?」

「いいや、これは一種の願掛けのようなものでね」

「願掛けか、一流の剣士でもそういうのを大切にするんだな」


この世界、気に入ったよ、導いてくれてありがとう、君たちに感謝する

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