第11話 ゼロを名乗る剣士の誕生

王国と帝国の国境付近の森の中で王国の兵に追われる1人の青年の姿があった


「はぁ・・・、これは参ったな・・・、予想以上に出血が激しいな」

青年のお腹の辺りの服が血で滲むのて手で押さえていた

「夢の異世界生活だと思っていたのに、まさか嫌われ者だとはな・・・」


「おい、探せ、まだ遠くには行ってないはずだ」


「腹を刺されたくらいでは、動けるんだな、それにしても異世界に来たのに痛みまでリアルとは結構きつい仕打ちだね」


森の中を彷徨う青年の前に開けた場所が目に映る


「あ、あれは街道か・・・もしかしたら、誰かがいたなら・・・」


青年は誰かが居ることに掛け、力を振り絞って街道まで走り抜けた


「ハァハァ・・・、これからの人生で、こんな悲惨な逃亡劇は2度と味わいたくないね・・・」


「おい、居たぞ!あそこだ・・・」


青年はさらに必至で逃げた、腹の傷がさらに避けよ血が溢れでようが必死になって逃げた、しかし、それも限界が訪れやがて足が縺れその場に倒れてしまった


「ハァハァ・・・、折角の異世界なのにレトリーのような美少女に会いたかったな・・・」


「覚悟しろ厄災の子よ」


王国の兵士が青年を槍で突こうとした瞬間、1本の矢が地面に突き刺さる


「そこまでだ!」


漆黒の鎖帷子に身を包んだ兵士らしき人物が木の影から現れる


「その矢が刺さったこちらは帝国領だと知っての狼藉か?」


「な、なにを!」


「この家紋を見てまだ剣を抜くというのであれば相手をしてやろう」


「お、おい、あの家紋・・・ラプンツェル家か・・・」

「く、くそ、お前ら引き上げるぞ」


「大丈夫か青年?、動けるか?」

「まさかこんな場面で美女に救われるとは、まだまだ僕の運も尽きていないってことかな・・・」

「その口の利き方では、大丈夫そうだな、近くの村まで連れて行ったやるがんばるんだぞ」


青年はすでに気を失っていた


ぼんやりとした意識の中、真っ白い空間の中顔ははっきりしないが誰かが目の間にいることだけはわかった

まるで、夢でも見ているようだった

もっと周りの状態を確認しようと意識を他に向けようとすると


「目を覚まそうとすれば目を覚ますこともできるかもしれないが、今はその時ではない、意識を他に向けないで俺にだけ集中してほしい」

「き、きみは?」

「俺の名前はシロ、君の名は?」

「僕は月神月兎・・・と言ってもネット上での名前だけどね」

「ん、その名前、なんか見覚えあるな・・・あ、たしかレトリー関連で見たような」

「ほう、これは偶然だね僕もレトリーの大ファンでってことは、君も元の世界の人間なのか?、いや、よかったよ同郷の人間が居て、こんなところで1人寂しく彷徨っていたら危うく殺されるところだったし」


「いいや、お前はすでにこの世界では死ぬ寸前0.00....01秒前ってところなんだが、お前の中での時間は止まっている、左目の数字を見てみな」

「たしかにゼロで止まっている」

「今お前に死なれるとレトリーの居る村が危険にさらされるから迷惑なんだよな」

「んー?レトリーがこの世界にいるの?」

「ああ、俺が生み出した」

「おお!!それはすごいな、よくやった君は僕にとって掛け外の無い存在だよ」


「とりあえず、それは置いといて君にここで死なれると困るってことだ」

「詳しい事情は分からないが、君のいう事に従おう、どうすればいい?」

「俺はきっかけみたいなものだ、レトリーを守るために、とにかく強く願ってくれ、君はこの世界で何を望みたい」

「そうだな、生のレトリーにあえるならすべてを捨ててでも、僕は彼女のための剣になろうじゃないか」

「ほほう、いいね、レトリーの僕として忠誠を誓うか?」

「ああ、誓うよ、レトリーの為に」

「ついでに俺の事もよろしく」

「ああ、わかったよシロ、君という友の為に」

「ちなみ君はもう元の世界には戻れなくなるかもしれないが、その覚悟もある?」

「元の世界?僕はレトリーにすべてを捧げてきた、こちらの世界に本物のレトリーがいるなら向こうの世界に未練はないね」

「ありがとう、それだけ強い意志があるなら時は進みそうだ、君に名前をあげようこの世界での呼び名は"ゼロ”だ」

シロは月兎に触れた


月兎はベッドの上で目覚めた

「目が覚めたか?」

目の前には自分を助けてくれた女性が腕組みをしながら窓の外を眺めていた

「・・・どうやら夢を見ていたようです、ここは?」

ベッドから起き上がる月兎

「あまり無理をするなよ、ここは近くの村だ、君は運がいい、思ったより傷が深くおそらく町まで行ってたんでは間に合わなかっただろう、たまたまこの村に腕利きの薬師が居て奇跡的に助かった、おめでとう」

「助けていただいて、ありがとう、命の恩人にいきなり名前を聞くのは失礼にあたるかな?」

「いいや大丈夫だ、私の名はレイルだ、レイル・ラプンツェルだ、君の名は?」

「俺の名は・・・ゼロ・・・」

「ゼロか、珍しい名だな、王国の兵に追われてたってことは訳アリなんだろうな」「訳ありね・・・」

異世界から来たなんて言っても信じてもらえないだろうしな・・・

「そういえば襲われていた時に厄災がどうの言っていたな・・・」

「厄災狩りか・・・、噂では聞いたことあるが、しかし見たところ君が噂の厄災には見えないが・・・」

レイルはゼロに鏡を渡す、鏡を見たゼロに左目の数字は消えていた

「こりゃ冤罪もよいところだな・・・ところでレイルさんこの村にシロって人はいるかい?」

「ゼロはシロの知り合いなのか?」

「この村にシロは来ているのか?」

「ああ、知ってるも何も君助けた薬師は彼の仲間だ」


「そうか、そうだったんだ、あれは夢じゃなかったのか・・・」

「どうかしたのか」

「いいや、彼は僕の親友なのを思い出しただけで」

「親友を思い出す?、なかなか面白い表現だね」

「ははは、そうだね、ところでレイル、君は見たところ剣を使えるようだが」

「ああ、当然だ、私に剣の事を聞くとは、ラプンツェルを名乗った上で剣の事を聞かれるとは、まだまだ当家を世に広めるには力不足と言うことなのだろうか」

「いいや、そんなことはない、どうやら今まで記憶を失っていたようで、名前と一緒に他も思い出したことがあって、少し運動に付き合ってくれないかと思ってね」

「いいだろう君が病み上がりだということを考慮して少し手を抜いて上げてもいいんだけど、それは不本意かな」

「まだ体がなれないからほどほどに頼むよ」


シロの左目がゼロを刻んだ時、シロは静かに眠るようにその場で停止した

セワスは安全を確認するとシロを背負い村まで戻ってきた


目が覚めるとレトリーが目に飛び込んできた、その姿はシロにとって天使にしか見えない、この世界がどこであれこんな天使に心配してもらえるならどこにも行きたくないと改めて思った


結局向こうの世界へ戻るのではなく周りから見ると、ただ眠っていたように見えていただけのようだ

自分が村に戻るまでの間にレイルがケガ人を連れてきて、ひまりがその治療を行ったと聞いた

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