第10話 まもなくゼロを刻む・・・

狼の件で自分の思いが少し変わった

自分が憧れていた理想ともいえる女性が目の前に居る

しかしその喜びより、もし彼女を失ったら・・・


自分は弱い、弱い故に彼女を失う危険も大きい

今ではその恐怖が喜びを上回っている

守ってもらうだけではダメだ自分も強くならないと

でも方法が分からない、俺はどうすればいいのだろう・・・


村での滞在も3日目になっていた

特に変わったことと言えば、この村の領主ラプンツェルの関係者らしく女性が1人で村長を尋ねてきていた、どうやら定期的に見回りをしているらしいが友も連れずに1人のところを見るとなにか訳ありなのだろうか


「リトリー様の村での人気はなかなかのようですね」

「流石のアクア様でもリトリーの魅力には敵わないみたいだな」

「アクアはリトリー様の為を思って本気を出してないニャよ」

「そうか、アクアはアクアなりに気を使っているんだな」

「な、なんですか急に、そんなやさしい言葉で手名付けようったってそうはいかないニャよ」

「そうだな・・・、みんなに説明した通り間もなく左目の時がゼロを迎える、俺になにが起きるのか想像はできないが、もし俺が留守をする場合、リトリーの事を頼む、お前達だけが頼りだ」

「御意」

「わかってるにゃよ」

「なにもできないかもしれないけど・・・がんばる」


この村は帝国の領地内、敵国の王国に近いとは言え保護を受けている村なのでそれなりに安全だ、うろうろ動くより大人しくこの村リトリー達を残しゼロの時を迎える覚悟を決めていた

首を切り落とされ、焼き殺され、落下死、溺死・・・

いろいろな死をこの世界で経験した

死にながらこの世界でゼロ向かえると厄災と呼ばれる所以が誕生する

正確には左目を奪われないように左目の防衛本能が他者を寄せ付けないように働くとも受け取れる


逆に死なずにゼロを迎えた時、リトリーが現れるまでなにも起こらなかった

リトリーが現れた時には元の世界に戻らなかったし左目の様子も変化した

これからなにが起きるのか自分でもわからない

だからこそ、ここは慎重に動かないといけない


とりあえず、村から少し離れた山の頂まで移動した

ここならなにが起きても大丈夫だろう

念のためセワスにだけ離れた場所まで付いてきてもらっていた

なにも起きない可能性もあるが、もしもの時は頼むと・・・

そしてシロにとっては眠るように静かにその時を迎えた

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