第6話 3人のメイド達

リトリーの前に跪くセワス

「お初にお目にかかります、リトリー様」


着ている服以外は様になる姿・・・膝まづいた時の動きにも一切の無駄を感じさせない程だ

身長は2mくらいだろうか、袖下から盛り上がる筋肉、恐らく全身の筋肉も相当なものなのだろう

なのに、なぜにピンクのメイド服なのだろうか?

リトリーにそういう隠し設定でもあったのだろうか?

パワー系のピンクメイド・・・一度見たらトラウマなのだろうが・・・記憶にない


「うーん、わからん」

「シロ?どうかした?」

「いやいや、なんでもない」


何気ない視線でこちらを見つめるセワスの視線が怖い・・・でもその視線で見つめられると何かを思い出しそうだ・・・


「レトリーさま」

「ん?セワスどうかした?」

「お願いがございます、メイド長として1人では少し心もとないので、できれば後2名ほどお付きをいただければと思います」

「おいおい、さっきのを後2回もするのか、この辺りの地形が変わってしましそうだな、さりげなくメイド長って言ったところも気にはなるが」


「セワス、じゃあ頼める?」

「御意に」

リトリーは2個の指輪をセバスッに預けた


「リトリーさま、シロ様、少しそちらの岩陰で身をお隠しいただければ幸いです」

「うん、わかった、セワスは大丈夫なの?」

「このくらいの爆発でしたら特に問題ありません」

「そ、そうなんだ・・・」

どんだけ強いんだよ、あれだけの爆発を物ともしないとは、たしかに爆発から悠々と歩いてくるはずだ

避難する2人


「では始めます」


セワスは2個同時に指輪のボタンを押し「3..2..1..ふんっ」っと投げつけた


「おいおい、2個同時かよ」


爆炎の中、セワスが飛び込んでいく


次の瞬間爆発の炎を背後にセワスが2人の少女を両脇に抱え歩いてくる

「これは主人公がヒロインを抱えて最後の爆発から脱出してくるシーン、そのままじゃないか!、く、悔しいがなんか負けたような気分だ」


セワスの右に抱えられた少女を荷物を落とすかのように無造作に手から離した

「うにゃ!」受け身も取れずに地面にべちゃりと落ちた瞬間声を上げている

「・・・・痛いニャよ、セワスッチ」

「猫ですから上手く着地するかと思ったのですがこれは失礼しました」

「扱いが雑だニャ、もう、シャーよ、シャー!」

セワスに向かって吹いている


その場に立ち上がりアクアは人差し指と中指でVを作りポーズを決める

「リトリーさま、シロ様、初めまして、みんなのアイドル!アクアちゃんだよ・・・にゃん!」

「おおう、よろしくな!」

「よろしくね、アクア」


身長はリトリーよりほぼ同じだが若干少し低いくらいか、140cm代なんだろうな、猫耳付きのショートヘア、来ている服は水色のメイド軍服、こういうキャラはどこかで見たのだろうか・・・


「シロさま~、会いたかったニャよ」

アクアがシロに飛びつき耳元で囁く

「アクアは知ってるニャよ、シロの秘密を・・・」

アクアは不敵な笑みを浮かべる

「シロ様がエロゲ・・・・」

シロは慌ててアクアの口を手でふさぐ

「げ、なんでお前そのことを」

「んんんん、もごもご」


「シロ?なに話しているの?」


「いやいや、なんでもない、なんでもない、なっ、アクア?」

シロはアクアの耳元で囁く

「この事をしゃべったら一生飯抜きな」

「な、もともとしゃべるつもりはないニャよ、なんせみんなのアイドルアクアちゃんがそんな下品な発言しないのニャ」

「下品って、なに?」

「いやいや、リトリーさん、なんでもない、なんでもない」


そういえば昔、興味本位でやってみたエロゲの話が面白くて最後まで遊んだことがあったか、たしかその時にキャラに猫耳も居たような・・・・

アクアの顔を見ると、不敵に笑っている


「にゃはははは」


なんて邪悪な笑顔だ、

そうだ思い出した

やっぱあの時のゲームのキャラクターだ

主人公が意中の相手と結ばれる寸前に背後から現れて、高速な手の動きで主人公を果てさせてしまうバッドな展開、その時に出てきた猫耳の少女

この猫耳娘が出てくると、どう回避しようにもバッドエンドが避けられない


「シロどうかした?アクアと何か話してから調子が悪そうだけど」

「い、いや何でもない、本当になんでもないから」

「シロ様なにか思い出したのかニャ?」ニヤニヤ


この悪魔め、な、なんてことだ、こいつの存在はヤバイ、もし仮にリトリーと結ばれるようなことがあったとしても、こいつが邪魔をしてくる可能性が高い、いいや確実に邪魔してくるだろう

終わった、俺のこの世界でも恋愛ストーリーは無残にもこの猫耳娘によってフラグが立てられてしまったじゃないか


「な、なんてことだ・・・・」

「なんかシロの落ち込みようが酷いね」

「シロ様元気出すにゃよ」

アクアはシロの背中を叩いた

ふ、原因はお前だよと言いたいが、そんなネタ話せないよな・・・


「あ、あのー、シロ様大丈夫ですか?」

「はい?」

「そのー、自己紹介のタイミングが無くなってしまいそうなので・・・ひ、ひまりと申します」

「ひまりさん・・・」


そういえばもう1人メイドが居たな

肩までの黒髪に赤い柄の入った黒いメイド軍服、リトリーよりから背が高いな、リトリーの耳を足したくらいだから160cmくらいか

耳も無いし、特に普通な気もするが・・・

この子ももしかしてエロゲに出てきたキャラってことは・・・ないかな・・・

思い出そうとしても・・・無理だな


「ひまりさんはどこかでお会いしたことは・・・」

「はい、ゲームの中で・・・・」

「あ、ああ、あれね、あのゲームね・・・なるほど」


適当な返事を返したが、やっぱ思い出せない主人公ってことは無さそうだ

そうするとサブキャラ系・・・うーん、やっぱ思い出せないな・・・


リトリーの身に着ける物から現れたメイド達

自分の過去の記憶から生み出された存在、1つはエロゲ、1つはゲーム、セワスはなんだろう、ゲームの可能性は高そうだけど、似たような名前のキャラが多すぎて分からない女装ゲーム?女装した執事・・・、あまり興味がないし記憶にも無い・・・、セワスの方がその存在が謎だわ

聴く機会があればさらっと聞いてみようか、なんか怖いけど・・・


セワスに見つめられると、なんだろう、この心の底からゾワゾワする感覚は、これはもしやトラウマ・・・黒歴史のたぐいなのか・・・

思い出さずに封印した方がよさそうだ・・・


「リトリーさま」

「なにセワス?」

「残りの2つの指輪の方はいかがいたしましょう?」


セワスさんそれはやめて、俺の黒歴史が増えそうな予感しかしないから、お願いだからやめてと心で叫ぶ


「そうね・・・仲間はたくさんいた方が楽しいかもしれないけど、とりあえず今日はここまでにしときましょう、シロもなんだか疲れたみたいだし、ほらシロもなんだか泣きそうになっているし」


ナイスだリトリー、この中で一番俺の気持ちを理解しているはずだ


「わかりました」


セワスが涙目のシロに近寄ってきて声を掛ける


「シロ様、心中ご察し致します、女子ばかりでは、本当の男心を理解することはできません、やはりここは男同士理解を深めいずれ本音で話し合える友として、刺しつ刺されつ、私はシロ様のそういう存在になりたいと考えております」


セワスはなにか勘違いをしている、絶対そうだ、男同士の友情っていうのは100歩譲って分からないことも無いが、刺しつ刺されつってところは絶対勘違いされてますよね

ん?まてよ俺がセワスと結ばれるとアクアに勘違いさせてバッドエンドを回避するなんて作戦はできないだろうか・・・

まさかセワスはそういう存在なのだろうか・・・

そう考えるとセワスの存在はある意味、希望の光の様にも見えてきた気もするな

でも、それでいいのか俺・・・

いや、いかん少しポジティブに考えてもよさそうだ


「セワスさんありがとう、少し気分が落ち着いたよ」

「そうですか、それはよかったです、必要な時にはいつでもお呼びください」


何気ない言葉であってもなんだか勘ぐってしまいそうになるな


「今日はなんだか情報量が多くて疲れたな、後の事はリトリー頼んでいいかな」

「うん、わかった」


「みなさんをここに呼んだのは、今後のことについて相談したくて、皆さんの意見が聞きたいの」

「そうですね、我々メイド達はこのまま野宿でもいいのですが、流石にリトリー様達をこのままという訳にはいきませんね」

「麓に村があるみたいだから、そこでアクアちゃん、初デビュー!!!」

「ひまりは皆さんに付いて行きます」


ということでとりあえずは麓の村まで移動することとなった

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