第3話 最悪だ・・・

なにが守ってやるだ・・・

正確にはこちらの世界の肉体に影響を及ぼすことはない

しかし彼女が受けた心の傷までは癒すことはできない・・・


剣で切られ刺され、口から血があふれ出す感触、鉄臭い味・・・

いくら元の世界に戻れるからと言って、こういった感触までは忘れることができない

「くっそぉ・・・最悪だ!」

イライラと同時に怒りが込め挙げ、壁をに八つ当たりをしてしまった


サクラは大丈夫なのか、いいや大丈夫なわけがない

とりあえず、隣町へいってサクラを探さなければ

隣町へ行く途中、思い出さないでおこうと思っていても、向こうでの出来事が頭をよぎる


街を出てから騎士に追いかけられ、サクラはその場で処刑され、遺体は街から離れた場所に遺棄され焼かれ時を迎える、自分はその場で斬首となりサクラの遺体と共に首を投げ捨てられゼロの時を迎えた

焼かれようが首を切り落とされようが左目だけは壊すことができず記録し続ける

首を切られても首の痛みを下半身の感覚の無さだけで済むが焼かれると痛みだけがゼロになるまで記憶され続ける、同じ死に方でも一番の地獄だ


「さてと、隣町に付いたのはいいけど、これからサクラを探すのに大変だな」

向こうの世界とこちらの世界の時の流れをこうも気にすることになるとは、でも、恐らくはお互いに戻ってきた時間は誤差の範囲のはずだ

隣町に付き改札を出て駅を出ようとした際に嫌でも視界に入ってきた


「おいおい、こんなに早く発見できるなんて今日はとっても運がいいな」

重病人のように壁にもたれながら歩く姿を見つけ駆け寄る

「サクラ、大丈夫か?」

「あ、シロ、うん、私は大丈夫、それよりシロは平気なの?」

「ああ、こんな事にはもう慣れちまってるよ」

「それより、そんな弱っていて学校へいけるのか?」

「今までずっと休んでたんだけどそろそろ行かないとと思って」

「肩、貸すよ、最初は大変だからな」

シロの肩にもたれ掛かるサクラ、シロは改めてサクラのその華奢な体でここまでよく頑張ったなと誉めてあげたい気持ちになっていた


「体に傷は無いのに、痛みだけが記憶していて思うように体が動かせなくて・・。熱くて息苦しい・・・思い出すと更に痛みが増すような気がしてなるべく思い出さないようにしようと思っていたんだけど、なかなか難しくて・・・」

「ああ、そうだな」

こちらを心配させないように笑顔を作っているんだろうけど、目には涙が溢れ苦しさが表情に滲み出ている、生きたまま焼かれる苦しみは自分も向こうの世界で経験済だ

「ちょっとそこのコンビニで休もうか?何か飲むか?」

「うん、ありがとう」

コンビニのベンチで腰を掛ける2人

少し重苦しい空気でもこれだけは聞いておかないといけない

「思い出したくもないだろうけど」

「うん、思い出したくない・・・けど、忘れたくてもこの数字が視界に入ってくる、次に向こうへ行く時間」

「ああ、そうだな、俺も何度も左目をくり貫いてやろうか考えた時があったが、こっちの世界でそれは怖くてできねえ、今までなんでこういう事になるのか真剣に考えた事は無かったが、サクラに出会えたことで俺の決心がついた、この左目の謎、絶対に突き止めてやる」

「ちなみにサクラの次の時はいくつを示してる?」

「ちょうど約1か月後・・・かな」

「そうか俺は1週間後だ、・・・俺の方が早いな」

「それまでに向こうの世界を調べる、サクラが来ても困らないように何とかする、だから頼む早まった事だけはするなよ、それだけ伝えに来た」

「うん・・・・期待していいんだよね・・・今はシロだけが頼りだから・・・」

サクラはうつ向いて泣いているのが分かった


ああ、とことん足掻いてやるさ、サクラの為にも、その為なら向こうの世界でなんでもやってやるさ

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