第3話 ムーブメント・点P
設問5
次の文章を読んで問題に答えよ。
線分AB上を移動する点Pがあります。点PはAからBに向け、秒速3㎝で移動します。
「どうも、点Pです。この間受験生に挨拶したら動いてんじゃねぇ殺すぞ、と言われました。どうも、点Pです」
点Pは心に深い傷を負いながらも指定の速度で移動を開始しました。
点Pがしばらく進むと、点U´にぶつかりました。
「あの、すいません。道を譲ってもらってもいいですか?」
「頼む!通してくれ!こっちも早くしないと大変なことになってしまうんだ!」
線分ABに点二つがすれ違うほどの幅はない。どちらかが引くしかないのだ。
とは言え点Pに引く気はない。これ以上受験生に嫌われては怪文書など送られかねない。
「お願いです!通してください!私が立ち止まったり、途中で戻ったりすると受験生が私を無視して次の問題にいくんです!」
「早くしないと魔物たちに襲われ…」
「魔物?え、あなたは何者なんですか?」
「あ、勇者一行です」
「問題製作者馬鹿じゃないですか」
点Pは困惑した。こんなパターンは今まで一度もない。だがここで引くわけにはいかない。これ以上問題を複雑にし、来年受験生の娘からこれ以上嫌われるわけにはいかないのだ。
「私の歩みに受験生の将来が掛かってるです!」
「俺が早くいかないと大変なことになるんだ」
「具体的にはどうなるんですか?」
「勇者が死ぬ」
「え!あなたが勇者では」
「いや、勇者はこっちだ」
点U´は『´』の部分を指さすとそういった。
「勇者はこれ、俺はただの魔法使い」
「じゃあこの『´』は何なんですか」
「棺桶」
「勇者死んでるじゃないですかー!」
「だから早く協会で蘇生しないとやばいんだよ!」
人の命がかかってるのでは仕方がない。今回は道を譲ろう。
点Pは来た道を引き返し始め、点U´も点Aにむかって移動し始めた。
問1
この時、この問題に舌打ちしている学生の人数を求めよ。
多少奇妙な物語 井石 諦目 @iishiakirame
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