第4話〈現役大学生ホストYくん〉

大卒なら将来安泰だと言える時代は遠の昔の話ですが、特殊な才能がない人間にとってこれほど有難い資格も他にあるまい…私の友人は、必ずしもそのように考える人間ばかりではなかったなと、ふと思います。


〈大学を中退した元ホスト〉


歌舞伎町のホストになったYくんは高校の同級生でした。Yくんと私は同じ部活に所属していたこともあり、高校時代私が最も一緒にいた時間の長かった学生の一人です。


高校時代のYくんは体格が良く、デブキャラとして皆の人気者で、文化祭などの催し物ではいつもヒーローのような存在でした。


Yくんは東京の中堅私立大学へ進学したあと、なぜかダイエットを始め(恋をしたらしい)みるみる間に痩せていき、盆休みに再開したときにはまるで別人となっていました。


分厚い肉が邪魔をしていて気付きませんでしたが、元は結構整った顔をしていたことがわかりました。茶髪であご髭を蓄えていて、エグザイルのメンバーにいても違和感がないくらい色男でした。


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Yくんも私や、中堅私立大学へ進学した同級生たち(つまりよくこのブログに登場するダメなメンツ)と同じように、大学の講義に面白みを見いだせずにいました。


いつの間にか歌舞伎町の雀荘に入り浸るようになり、勝った金で酒と女のいる店に行き、ぼったくられ、帰りの電車代も無くなり途方に暮れていたところ、スカウトのお兄さんに声をかけられたと言います。


「めちゃくちゃ儲かってるんでしょ?」と茶化しながら私が言うとYくんは「いや、月20万くらいだよ、ほんとゴミ。お客さん付かないとコンビニのバイトと変わらない。マジで意味わからん」と答えました。


私もたった20万円のために日中の講義をほぼ犠牲にして深夜バイトに勤しむYくんの気持ちがマジでわかりませんでした。


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Yくんについたお客さんは3人。


1人目は43歳デリヘル嬢のカホさん。腕にリストカットの痕が模様のように刻まれていたそうです。2人目は52歳主婦のマサミさん。家を出て行った息子の代わりにYくんを可愛がっていました。3人目は38歳キャバ嬢のヒトミさん。Yくんとデート(同伴)する度熱いディープキスを求めてきたと言います。


Yくんは、どんなに性格に難のある学生とも分け隔てなく接することのできる裏表の無い心優しい性格の持ち主でしたが、カホさんから身体の関係を求められたときだけは逃げてしまったと言います。


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大学へは殆ど行っていなかったYくんですが、ここは中堅・私立・文系大学です。講義は代弁、テストはカンニング、レポートはコピーで万事問題ありません。


割と要領よくやっていたYくんでしたが、ついに尻尾をつかまれます。


ノースリーブに短パン、金髪という風貌で20分遅刻しテストを受けにやってきたYくん。当然監視員からマークされ、カンニングがバレてしまいました。(正確に記述すると、Yくんが受けたのは持ち込み可のテストだったのでカンニングではないのだが、自分で書いたレジュメしか持ち込んではいけないという大学の規律があり、Yくんが持ち込んだのは友人のレジュメのコピーだったため規定違反となったらしい)


ペナルティは半年分の全単位没収。ただでさえ少ない取得単位がさらに減り、まず4年では卒業が難しくなってしまいました。


これで俄然やる気を失ったYくんは、年齢的に4年生となったところで大学を中退し、今は顔とホスト時代に培ったトーク術を武器にIT企業の営業マンとして腕を振るっています。


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大卒なら将来安泰だと言える時代は遠の昔の話ですが、特殊な才能がない人間にとってこれほど有難い資格も他にありません。なんだかんだ順風満帆な生活を送っているYくんですが、一緒に話していると、やはり言葉の片隅に、大学を卒業した同級生たちへの羨望を若干感じます。


いくら楽単でもたまには講義に出席しましょう。昼夜逆転するバイトなどもっての他です。


※この物語は事実を基にしたフィクションです

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大学を去った人々 水城ナオヤ @gad_tsuxin

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