第2話「擬態」

美少女「ってことが昨日あったの!」バンッ


女「……」


美少女「魔法とか、超人とか、具体的なことは何もわからなかったんだけど、とにかく凄かったの昨日は! 私達が普段暮らしているすぐ近くにあんな世界があるだなんて!」キラキラ


女「意味がわからん」


美少女「どうして?」


女「だってさぁ、俺って、あの俺だよ?」チラッ


俺「……」ボーッ


女「あんなぼっちの陰キャがそんな強いわけないし」


美少女「本当なの!」



女「いやぁ、そりゃ美少女の事は信じてあげたいけどさ」


俺「……」ボーッ


女「学校でのあいつを見る限りとてもじゃないけど、はいそうですかとはならないよね」


女「夢でも見たんじゃないの?」


美少女「……」


ガブッ


女「び、美少女!? なんであんた親指の先食いちぎってるのよ!?」


ポタッポタッ


美少女「ふ、ふふっ。ほら、血がいっぱい……。漫画とかでよく見るけど、こんなに痛いんだね……」ジンジン


美少女「女ちゃん。私は寝ぼけてないよ」


女「あんた……」


女「……わかったよ。美少女がそこまでやるっていうのなら」


美少女「わかってくれたの……」


女「直接試してくる」ダッ


美少女「あ、ちょっと! 何する気!?」


女「一発ぶん殴ってやるのさぁ。それでわかるよ、強さって」


美少女「駄目! 俺くん怒らせると刻印されちゃうよ!」


女「それもよく分からないんだよ!」



女「おーい! 俺ー!」タッタッタッ


俺「ん」


女「オラァッ!!!」バキィッ


俺「ごふぁっ!?」ガシャーンッ


女「よいしょっと」ノシッ


俺「う……う……」


女「あはっ! やっぱり弱いよこいつ! 弱いィ!」バキッボコッ


俺「や、やめぇっ! 俺が一体何したって言うんですかぁ!?」


美少女「ちょっと! 何馬乗りになってボコボコにしてるの!」


美少女「俺くんも! 昨日そんな感じじゃなかったじゃない! 本気出してよ!」


女「美少女ぉー! 無駄だって! こいつすんげぇ弱いもん! ほらっ! ほらぁっ!!!」ガンッガンッ



女「はぁ……はぁ……」


俺「」ピクッピクッ


美少女「ああ、俺くん……。こんなのひどいよ……。でも、これで終わりだよね……?」


女「ねえ! 手頃なブロック片持ってきて! 顔面ぐちゃぐちゃにしてやる!」バッ


美少女「女ちゃん!」


手下「持ってきやしたぁ!」


女「サンキュッ! いっくよー!? そぉれ!!!」ブンッ


ブロック片「」グワアッ


美少女「もう見てられない! あぅっ!」バッ



シーンッ


美少女「……?」チラッ


女「」ピッタァ


美少女「え、何これ……?」


教室「」ピッタァ


美少女「皆、固まっちゃってる……。まるで、時間が止まったように」


美少女「この不思議な現象、もしかして。ううん、きっと」


俺(やれやれ。お前の友人はいささか血の気が多いようだな)


美少女「俺くんの声!」


俺(しかし、お前は迂闊すぎる。昨日の出来事をそのまま話しても信を得られるはずがないだろう)


美少女「ごめんなさい……。でも、女ちゃんは友達だから……」


俺(ふぅ。今日のところはこのまま俺が殴られて手打ちとする。次はないぞ。時を動かす)


美少女「待って! まだ私、話したいことが……!」


ブロック片「」グシャアッ


美少女「あ……」


俺「おぼっ! おぼおおおぉぉぉぉっ!!!!!」ピューッ


女「綺麗に鼻血出たぁ!」


俺「もう、許してぇ……。なんでもしますぅ……」ピューッピューッ



女「ふぅん。なんでも、ね」ペロッ


俺「お願いします……。このままでは、死んでしまう……」プルプル


美少女「お、俺くん……」


女「じゃ。とりあえず、美少女に土下座しなさい」


美少女「女ちゃん! 私、そんなこと望んでないよ!」


女「ダメ。男なんだから、ケジメはちゃんとつけさせないと。ほら、行きなさい」


俺「あ、うぅ~」ズリッズリッ


俺「美少女さん、申し訳ございませんでしたぁ……」ペコーリ


美少女(うぅ、ごめんね俺くん。ごめんねぇ~……)ポロポロ


女「うんうん」ニコニコ



女「ほら、折角彼が地面に額擦りつけてるんだから美少女も応えてあげないと。右脚上げて」


美少女「こ、今度は何を……?」


女「俺くんの頭に右脚を乗っけて~」


ズムッ


俺「くぅっ。蒸れが……」


美少女(ああっ、今日は体育で長距離走があったのに! 恥ずかしい……!)ムワァッ


女「さあ、美少女。そのまま思い切り頭を踏み抜いてやりなさい」


俺「なぁっ!?」


美少女「……」


俺「び、美少女さぁん……どうか、ご慈悲を……」プルプル


美少女(理由はわからないけど、俺くんは正体を隠したがっていて。私がそれを話してしまった)


美少女(私のせいで、俺くんはこんな目に遭っているんだ……。私が、責任をとらないと)フゥー


美少女「……!」キッ


グシャアッ


俺「ぶぎゅっ!!!」


女「この一件! これで手打ちとする!」パァンッ

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【SS】美少女「いやぁ! 誰か助けてぇ!」 俺「……」ヌッ 文月 景冬 @Fuzukie

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