第56詩 早朝の考え事
ある冬の冷えた朝
何気なく見たスマホの画面
そこにあったのは、きみの笑顔
おかしいな? いつの間に開いたの
睡眠不足の頭を揺らして
早朝の一番電車に乗り込んだ
ああ いつもの一日が始まる
今日帰れるのは何時だろう
ただがむしゃらな時間を過ごして
きみのことなんて考えもしないのに
どうして
そうやって笑いかけてくるんだ?
曖昧な記憶と感情は
いつしか時を刻むのを止めて
ただ漫然と社会の中に埋没していくだけだから
そんなもんだって 諦めていた
ぼくは替えのきく社会の駒で
こうやって堕ちていくんだって……
春が来て桜舞落ちる
その儚さがぼくの命の終わり 示すようで
心がざらつく
ネットの中ではフェイクが勝り
本当のことは見えなくなってしまうけど
それでも
きみだけは幸せでいて欲しい
そんな不確かな夢を描いて
誰かに幸せを預けてしまったら
ぼくは 一体何処へ向かって歩くの?
神様みたいな何かが 悪魔のささやきを届けている
優しさの裏にあるような気がした 暗転
きみの笑顔が映るファイルを
持ち上げるのさえ億劫な指をスライドさせて
消してしまったなら
ぼくはきっと戻れないだろう
太陽が照るあの空の下 あの頃みたいな軽やかなステップを
指が止まり電車も止まる アナウンスされた終着点は
もう立ち上がらなくちゃ
やるべきことを頭の中で考えて
ふと 思考停止
大声で笑ったのはいつだっただろうか?
涙が出る程声をあげたのは……もう覚えてないや
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