六 憔愕絞

六 憔愕絞(1)

「――こんなの……こんなの間違ってる! 俺達は誰も悪くない!」


 静寂に包まれた真っ暗な部屋の中、上田幸信は体の自由を奪われた状態で首に縄をかけられていた。


 自らの力ではその縄から逃れることができず、少しでもバランスを崩して乗っている踏み台から落ちれば、縄は彼の引き締まった首の肉に無慈悲にも食い込むこととなるであろう。


「あずさも、俺も……他のやつらも誰も悪くないんだ! あれは誰のせいでもない……あれは無知なこどもゆえに起きた事故だったんだ!」


 その文字通り手も足も出ない状態のまま、彼は自分をそんな目に遭わせた存在に対して臆することなく意見する。


「それでも……それでも許せないっていうんだったら俺を殺せっ! 俺に恨みを晴らせばいいだろ!」


 しかし、その必死の訴えにすら耳をかさない冷酷な相手に対し、彼は忿怒の形相を浮かべて怒号を周囲の闇に響かせる。


「うぐぅっ…!」


 瞬間、足の下に置かれた台が外れ、その首に纏わりついた硬い縄の輪が、自らの重みによって彼の肉に深く喰い込んだ――。

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