勇者と勇者

電咲響子

勇者と勇者

△▼1△▼


 勇者は勇者に問う。


「あのさ、お前本物の勇者なのか?」


 勇者は勇者に答える。


「きみこそ本物の勇者なのかい?」


 勇者たちはお互いに勇者たる所以ゆえんを競い合う。

 場所は魔王の城。

 レベルも低いのにお互い意地になっているのだ。


「ここで魔王を倒せたら」

「無理だよ。せめてガーディアンを倒すことを目標にしよう」

「は? 怖気づいたか?」

「現実的な案だよ。僕らのレベルじゃとても魔王を倒せない」

「……ふん。いいだろう」


△▼2△▼


 勇者Aはガーディアンの攻撃にやられて死んだ。すさまじい砲撃を受け粉々になって死んだ。勇者Bは蘇生魔法を唱える。復活した勇者Aは、

「なんだこいつ!? バケモノじゃねぇか!!」

 と吐き捨てた。


 勇者Bはため息をつく。僕らのレベルじゃ到底かなわない相手なのに。


「もう少し難度の低いダンジョンからやろうよ」

「……は?」

「だから、身の丈に合った場所から」

「ふざけんな。俺は勇者だぞ」


△▼2△▼


 勇者Aはバラバラに吹き飛んで死んだ。ガーディアンの攻撃によって。勇者Bは再度蘇生魔法を唱える。復活した勇者Aは、

「なぜ倒せない? レベルは充分あるはずだ」

 と疑問を呈した。


 確かにレベルと装備は充実しており、さらに女神の加護すら受けている。だが、勇者Aは一撃で木っ端微塵になった。ガーディアンの攻撃によって。


「これ以上鍛えても無駄だね。攻略法を開拓しなきゃ」

「あのな、今思ったんだけどよ」

「……?」

「お前、後ろに隠れてばかりだよな」


 勇者Bにとっては衝撃的だった。サポート役として立ち回っていたのに。


「ごめん。次からは僕が前線に立つよ」


△▼3△▼


 勇者Bはガーディアンの攻撃であっけなく死に、回復魔法を持たない勇者Aはなすすべもなく死んだ。

 勇者たちは再度全滅した。


△▼4△▼


「連携が取れていれば、可能性はあったのかもしれません」


 神聖な教会で二人の肉塊を見ながら神官が説く。

 次に派遣される勇者たちに同じてつを踏んで欲しくはない――

 ――などとは微塵も思っていない。


 勇者はしょせん、使い捨ての消耗品なのだから。


<了>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者と勇者 電咲響子 @kyokodenzaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ