転生したら《９９％死亡確定のゲーム悪役領主》だった！ メインキャラには絶対に関わりたくないので、自領を発展させてスローライフします

第30話 戦争の代償

　戦場での勝利は得たものの、その代償は想像以上に大きかった。

　領地には、傷ついた兵士たちが溢れ、崩壊した村が点在していた。

　俺の目の前に広がる光景は、これまで築き上げてきた領地が一瞬にして崩れ去るようなものだった。

　俺が目指していたスローライフとは正反対の現実が、目の前に突きつけられている。

　俺は、戦争の勝利が本当に意味のあるものだったのか、自問せずにはいられなかった。

「アレン様、報告です。東の村が完全に壊滅しました。生き残った者たちは避難していますが、再建には時間がかかりそうです。」

　リリィが悲痛な面持ちで報告してくる。

　俺は彼女の言葉に耳を傾けながら、頭の中で再建のための計画を練り始めていた。

　だが、どうにも重い気持ちが拭いきれない。

「わかった。村の再建には最優先で資源を回す。それと、負傷した兵士たちの治療も急いで手配しよう。リリィ、医師や薬の手配を頼む。」

　俺は冷静に指示を出したが、心の中では葛藤が渦巻いていた。

　戦いで勝利を得ることは領地の安全を守るために必要だと思っていたが、その勝利がもたらした犠牲はあまりに大きい。

　領民たちの悲痛な表情が、俺の脳裏に焼きついて離れない。

「アレン様、大丈夫ですか？」

　リリィが心配そうに尋ねる。

　俺は彼女に頷くが、その言葉に自信があるわけではなかった。

「大丈夫だ。ただ、少し考えたいことがある。」

　俺はそう言って、戦後の混乱が広がる領地を歩き始めた。

　兵士たちは戦争の疲弊から立ち直れず、領民たちは家族や財産を失って途方に暮れている。

　この光景を目の当たりにするたびに、俺の中でスローライフへの思いが揺れ動く。

「戦争なんて、こんなものか…」

　俺は自らに問いかける。

　俺が本当に求めていたのは、平和で穏やかな日常だった。

　それが、今のこの状況とはかけ離れたものになっている。

「アレン様、次の戦いが近づいているという報告があります。敵軍は再編成を進めており、我々が再び攻撃を受けるのは時間の問題です。」

　セドリックが俺に伝えてきた。

　俺は再び戦術を考えるための思案に沈むが、その一方で、俺が本当にこれを続けるべきなのかという疑問が頭をもたげていた。

「戦術を練らなければならないが…」

　俺はふと口を閉ざした。

　このまま戦争を続けて、俺の領地はどうなるのか？

　守るべきものは本当にこの戦争で守れるのか？

「アレン様？」

　セドリックが訝しげに俺の顔を覗き込む。

　俺は迷いを悟られないよう、すぐに顔を引き締めた。

「いや、次の戦術を考える必要がある。我々はこれ以上の犠牲を出すわけにはいかない。何としても戦争を終わらせなければならない。」

　俺はそう言って、再び戦略を練り始めた。

　だが、内心では、この戦争が終わったとしても、スローライフを取り戻せるのかという不安が消えなかった。

　その夜、俺は一人で城のバルコニーに立ち、月を見上げた。

　静かな夜の空気の中で、俺の心は葛藤していた。

　戦争を続けることで得られるものと失うもの、そして俺が本当に望んでいたもの。

　俺はこれまで、領主としての責務を果たすために戦ってきたが、それが正しい選択だったのかどうか、今になって疑問が湧いてきた。

「アレン様。」

　リリィの声が背後から聞こえた。

　俺は振り返ることなく、そのまま静かに問いかけた。

「リリィ、俺は間違っているのかもしれないな。」

「どうしてですか？」

　リリィが近づいてくる気配がする。

「俺は、この領地を守るために戦い続けてきた。でも、その戦いが領民たちを苦しめ、領地を破壊している。俺が本当に守りたかったものは、平和で静かな日常だったはずだ。だが、今の状況ではそれがどんどん遠のいていくように感じる。」

　俺の声には、どうしても虚しさが滲んでしまう。

「アレン様、私たちは皆、あなたが領地を守ってくれると信じています。それに、あなたの知識と決断力があったからこそ、今までこの領地は守られてきたんです。」

　リリィの言葉は励ましだったが、俺はその言葉がどれだけ自分に響いているのか、わからなくなっていた。

「ありがとう、リリィ。」

　俺は微笑んで彼女に応えたが、心の中の葛藤はまだ消えていなかった。

　俺は再び月を見上げた。

　戦争を終わらせ、再びスローライフを取り戻すことはできるのだろうか？

　それとも、このまま戦い続けることで俺自身も変わってしまうのか？

　俺はその答えを見つけるために、もう少し考える必要がある。

　翌日、俺は戦略会議を開いた。

　領地の未来を守るために、最良の方法を見つけるためだ。

　セドリック、リリィ、そして他の部下たちが集まり、次の一手について意見を交わした。

「次の攻撃は必ず来るだろう。しかし、これ以上の戦いで領民たちを犠牲にすることは避けたい。」

　俺はそう切り出した。

「確かに、戦争を続ければ被害はさらに拡大するでしょう。ですが、敵が再び攻めてくれば、戦わなければ領地を守ることはできません。」

　セドリックが冷静に答える。

「だからこそ、戦わずに敵を撤退させる方法を考えたい。」

　俺はそう提案した。

　俺が今までとは違う視点で考え始めていることに、皆が驚いたようだった。

「戦わずに、ですか？」

　リリィが不思議そうに尋ねる。

「そうだ。領民たちを守るためには、戦争を回避しなければならない。それが最良の解決策だ。」

　俺は確信を持ってそう言った。

　俺が望むのは、もう戦争ではない。

　平和で静かな日常を取り戻すための方法を見つけることだ。

「わかりました。では、そのための手段を考えましょう。」

　リリィが微笑みながら頷いた。

　その瞬間、俺の心の中で何かが動いたような気がした。

　戦争ではなく、平和のために戦う方法を見つける。

　それこそが、俺が本当に求めていた答えだったのかもしれない。

　俺たちは新たな戦略を練るために話し合いを続けた。

　この戦争を終わらせ、再び平和な日常を取り戻すために。

　そして俺は、次の一手を打つ覚悟を決めた。